前回に引き続きA4の紙に1ヶ月の経過をプリントして渡した。診察室のとびらを開けると毎度思うのだが、いまの主治医はともだちと顔が似ている。先生と話しやすいのに手腕はもちろん、そういうところもあるのだろうか……。

わたしは音に敏感かつ、人のたくさん集まっているところが苦手だ。寛解しているものの不安障害もあるので、元気なときでも威圧されている感じがしてしまう(むりに我慢しつづけると、再発するのだろう)。満員状態の病院の待合なんかも、それにあたる。この日は気まぐれに午前中の予約をしてみたのだが、おそろしく混んでいた。待ち時間にしびれを切らした夫をなだめる妻、車椅子のロックの音、鼻をかむ音、いらつきながら電話をするおとこ、患者の名前を呼ぶ看護師……死のにおいがはびこる。午前に予約を入れるのはやめよう、そう思った。

音の話に戻ろう。なかでもとくに笑い声、こどもの声、くしゃみ、怒号が苦手だ。職場でたまたまそういう音の集まる機会があって、それ以降急激に鬱っぽくなってしまったのが去年の末のことである。その翌日に遮音性の高いイヤホンを買い、いまも調子のわるいときは何も聞かないでも耳につけている。年末年始はむりなく過ごし、穏やかなきもちに戻ったところで仕事始めとなった。

先生によると、今回のことは音を拾いすぎる(聴覚過敏)という単一の現象ではなく、注意の切り替えの苦手な特性(ADHDの診断があり、その特性だろう)や、そのときの調子も連関しているという。さらに、一旦静かな場所に戻ってから復帰してもまったく改善しない上「しごとを辞めたい」レベルの思いに至る状況は「赤信号の状態」だという。

いろいろ話をするなかで「みかげさんは、自分の疲れの気付きが少し人より鈍いかもしれない。」という話に移る。自閉症スペクトラム圏の人のなかには、自分の体調変化に気付きづらい人があるという。人によっては「自己モニター力」と呼ぶこともあるそうだ。わたしの場合、およそ不調をきたしてから疲れに気づくようなので、上のような「赤信号」ではなくその前段階、いわば「黄信号」のときに気づけるとよい、という話になった。とはいえ、日々のなかですぐに「こういう状態だから黄信号だ」とわかれば苦労はしない。時間をかけて見つけていきましょうという話になった。体調をまいにち記録しているのでさかのぼってみたけれど、どれが単なる不調でどれが「黄信号」の体調なのかはよくわからない。そういえばいま風邪を引いているけれど、それも疲れの反応のひとつなのだろうか?振り返るとあんまりわたしは、風邪を引いてこなかった。それなのに今年度は2回、引いている……。しかし両者とも猛烈に寒い思いをしたあとで風邪を引いているし、なんともいえない。先は長そうだ。

もうひとつ言われたのが、上のような音に対する過敏さや疲れやすさというのを、職場のひとにわかってもらえたほうがよいのではないか、という話だった。職場のひとには「睡眠が不安定だ」ということくらいしか伝えておらず、そのことも責任者しかしらない。彼らは精神疾患にたいして理解があるほうなので、話してみようかなと思った。しょうじき、もういちど同じようなことが起きたとき、その場にいたくないと思ったのだ。年に一度あるかないかの機会で憎悪の念を深め、いきなり「辞めます」となれば職場のひととて困るだろう。それ以外のところではたいした不満もないし、興味のある業界なので勉強になることのほうが多いのだ。

「みかげさんも安心して長く働けるし、職場のひとも状況がわかると対応しやすくなりますから、お互いのために伝えてみるといいんじゃないかしら。」

わたしは頷く。業務といえど、ここまで親身なふうに接してくれる先生というのもめずらしく感じる。医療は診療報酬の点数で値段がきまるので、どんな医者だとしても患者に提供したものの量(何分話したか、処方箋を書いたか、検査をしたか等々……)で一律の金額を請求できてしまって、不公平な気がした。精神科は相手の話を聞かずにあれこれ施すのにはリスクが高い。そのひとの背景にあるエピソードを聞かないことには(さいあく、聞いたところで)診断名すらおぼつかない。じっさいわたしもはじめにかかった病院から「統合失調症」の診断を下され、ぜんぜん効かない薬を投薬された経験があるのでさらにモヤモヤする。

さて、前回出た睡眠薬ロゼレムは異常な眠気に見舞われたのでルネスタに戻してもらった。苦いけれど眠れないよりはましだ。風邪のおかげか今週はあまり夜中に起きないので、治ってからまた様子をみたい。飲まずに眠れるといちばんよいのだがなぁ。

ということで、職場に自分の特性を伝えるフェーズに入っていく。いままでずっと「甘えだ」「弱さだ」「やればできる」「気合でのりきれ」と言われ続けていた音や注意欠陥のことを「伝えてもいいんだ」という安心感と、責任者へ伝えたときの反応に対する不安との間に揺られて、その日はねむった。

読んでくださり、ありがとうございます。職場への開示なんかはもう少し経過を得られたら書いていく予定です。