◆「つなげる」ちから

 この連休はヒンドゥー教とイスラム教の関係と、15世紀ごろに衰退してしまった謎多き宗教、マニ教のことを勉強していました。今年の頭くらいから、世界史をもう一回勉強しなおしています。にんげんの歴史をみていると車輪のようだなと感じます。手に持つ道具が変わっただけで、根っこにある征服感情や支配欲はどの時代を見てもあんまり変わらないのですね。それが連綿とつづいたのが、人の歴史だと思わされます。
 本質が大きく変わっていないからこそ、歴史から学べることは多いです。それどころか、過去のサンプルはいっぱいあるのに、へいきで同じ過ちを繰り返します。プロイセンの宰相ビスマルクの「賢者は歴史から学ぶ、愚者は経験から学ぶ」という言葉があるのですが、ほんとうにそのとおりだなと思います。
 世界史をざっと概観するには出口治明『全世界史』という本がおすすめです。2分冊で多いと思いきや、読みやすくわかりやすい。 出口さんは経営者ですが、一般向けの歴史の本をたくさん書かれています。2冊読むのはつらいというひとは、宮崎正勝『世界全史』でもいいと思います。こちらは時代ごとのポイントをおさえながら書かれており、流れをつかみやすいのがいいところ。宮崎先生は歴史教育を専門にしている歴史学者で、「味」や「酒」などさまざまな切り口から世界史の本を書かれています。……それにしても、二冊のタイトルが似ていてややこしいですな。

 社会福祉と世界史は、一見リンクしていないようにみえますが、ひとの営みという部分では共通しています。現状にいきづまったときのヒントが、歴史の至るところに隠されているように思うのです。別の分野で学んだものを考える材料にしていくというプロセスは、結構大事なんじゃないかと思います。
 日本の教育は文系・理系からはじまってどんどん細分化・個別化されますが、本来学問は横断的で、あちこちに行き来できる、広がりのあるものです。大人になってから「もっと勉強しておけばよかった」という人が多いのは、単純に勉強をしていなかったというより、こういった横断的な学びがとてもおもしろいし、ときに役立つと知るからなんじゃあないかと思います。むろん、わたしもそのうちのひとりです。
 ここで、ひとつの疑問が浮かびます。どうして日本の教育は個別化していく方向へいってしまうのか?これは、日本の大学院進学の割合が極めて低いこととも関わってきます。そのひとつの答えが『日本社会のしくみ』という本に書かれています。これは雇用を切り口に書いているのですが、教育機関の役割についても触れています。新書にしてはとっても分厚いのですが、ためになる一冊です。

書店で平積みされていたから、売れているのかな?

 さて、社会福祉の中ですべてを解決しようとすると、そう歴史も深くないわけですから、とうぜん限界があります。そういうときこそ別の学問から学ぶ姿勢が必要なのではないか、そう思うわけです。
 たとえば、福祉作業所の工賃(いわゆる給料ですな)が破格すぎるという話が出ていますが、そもそも福祉作業所には経済原理が働いていないからそうなるのです。既存の経済原理と切り離すのには「競争の場で不利になってしまう障害者を守る」といったようなよさもあるのでしょうけれど、別の見方をすれば、支援者が社会との分断点を積極的につくってしまっていると捉えることもできます。そこから就労に結びつきづらいというのは、ある種当然の帰結かもしれません。守ることがときに当人の利益と逆行するのは、子育てなんかでもよくみる光景ですね。
 ここで経済学が登場です。なんと、障害者福祉に特化した経済学の本がこの世にはあります。ありがたいことです。

 中島先生も宮崎先生と似ていて、大相撲や高校野球、そしてお寺にも経済学的なアプローチを加えて分析を行っています。いずれも、経済学の原則である「中立性」の欠けやすい業界かもしれません。社会福祉に関していえば、どうしても利用者側によりそってしまいがちです。それは悪いことではないし、いい部分もたくさん生み出しているのですが、それだけですべてが解決しないことも事実です。国の財政が傾きつつある今、税金で多くを賄っている福祉業界は、そのありかたを再考するタイミングにさしかかっているように思えてなりません。

 このように、自分の関心があることと別のことをひきよせて、つなげていく。繰り返しになりますが、これが既存の世界から新たな何かをうみだすときに必要なちからじゃないかと思います。これは学問にかぎらず、創作でも思わぬインスピレーションがおっこちてくるときがあって、たいへんおもしろいものです。一種の「関係妄想力」と呼んでもいいのかもしれませんな。

 読んでくださり、ありがとうございます。宗教とそれをめぐる歴史、新鮮です。すっかり世俗化しても、そこからなにか学べることがあるような気がします。

精神
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ヒプノシア

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