◆感想『九条の大罪』第75審「至高の検事」11

今週のお話

そもそも、どういう話だったか

前回から、3?4?週間、あいた。京極の息子・猛が犬飼たちに殺され、とはいえ、犬飼たちはそれを知らずに、人からの依頼を受けただけなのだが、まぁ、そんなことなので、おおごとになってしまった。壬生の指示で身柄を隠すも、壬生じしんにも疑念、そして危険が迫ることはまちがいない。経営する自動車工場にも、元・伏見組のヤクザがダンプで突っ込んでしまったのだ。そして、九条の事務所には京極たち。猛の死体をひきつれて現れ、壬生の居場所を問うのであった。

ありし日の九条と烏丸

九条が、烏丸を飲みに誘ったようだ。しかも、夕方からと、忙しさにそぐわないものである。出雲という人の、死刑判決が出たらしい。「所詮は他人事と思っていましたが、」というところから、どうやら九条に関わりのあることが伺える。おそらく、弁護していたのだろう。割り切るのは簡単ではないという九条に、「とことん付き合います、」と答える烏丸。2人のバディの関係が良好だったころのことだ。

九条の事務所

京極は、今も、九条の事務所に居座っている。へたな動きをとらないよう、監視しているのかな。いつまでいるのかと問う九条に、壬生が見つかるまでと迷いなく答える。そんなとき、壬生のスマホに着信があり、すぐに向かうといって、京極はどこかに行ってしまった。

菅原、壬生、そして犬飼

菅原が壬生に電話をする。その車内には金属バットやスタンガンなど、物騒なものが転がっている。壬生の言うとおり、兵隊とよばれる、舎弟たちを集めたことを報告する。目的は知らされていないらしく、菅原は壬生の真意を問う。しかし壬生はそれに答えず、いつでも出動できるよう、車で待機しておいてほしいという。

壬生はガソリンスタンドで給油する久我に、トイレがてら、買い出しに行ってくるという。久我やおにぎりと、クリームソーダっぽい甘いものをオーダーする。すごい食べ合わせである。

ところ変わって、犬飼の仲間のひとりが買い出しから戻ってくるが、お菓子とカップ麺ばかりだと、もうひとりの仲間が悪態をつく。当人は「何がいけねーんだよ?俺はお菓子が主食なんだよ。」と悪びれる様子もなく、こんな状況でポケモンをしている、猛に彼女を殺された、と暴露した男に文句を言っている。

そんな中、犬飼は外に出て、公衆電話で壬生に連絡をとる。京極の息子を殺したことはとっくに伝わっており、界隈でも話題の中心になっているという。金はあるので海外に逃げようと、手配をお願いする犬飼だが、壬生は犬飼らの現在地を尋ねる。埼玉の端にあるラブホテルにいるというが、壬生はすぐに出るよう促す。というのも、伏見組に指名手配をかけられているため、犬飼たちの顔写真が出回っている可能性を示唆する。位置情報を送るので、そこで待ち合わせることとなる。思った以上にまずい事態になっていることを知った犬飼は、慌ててホテルに向かう。その傍らで、黒塗りの車が走り去っていった。ただごとではない、と直感しただろう。

一方壬生と久我は、コンビニ飯で晩餐だ。九条から連絡を受けた壬生は、犬飼に指示した場所で待ち合わせるのであった……。

感想

大きな動きがこれから出てくるのかな、といった一話だった。来週も続くと思われるので、至高の検事のサブタイトルがどのあたりで回収されるのか、そろそろあきらかになってもよいのでは?出雲という名の被告人の死刑判決のことがさらっと巻頭カラーに描かれており、そこで九条は「他人事だと思っても割り切るのは簡単ではない」とこぼしている。これはさりげなく描かれているものの、結構大事な描写のように思う。九条の仕事のモットーとしてこれまで出てきたのは「法律と道徳は分けて考える」「依頼人の貴賤や善悪で判断しない」のふたつが大きなものだった。徹底的にそうであっても、すべてを割り切りながら仕事をしているわけではない、というのが今回のせりふだ。これは読者たるわたしたちが薄々疑ってきたものでありながら、言葉として出てきたのは初めてになる。死刑判決といえば、国内の判決の中で最も厳しいものだ。依頼人第一でやっている九条としては、力を尽くしたものの「成功」とは到底言い難い仕事となったことだろう。それに対し「とことん付き合います」という烏丸との関係も、だいぶいい頃だったことがうかがえる。

それをもって、今、事務所には京極がいる、という強烈なコントラストが、久しぶりの掲載を心待ちにしているわたしたちの脳天を衝くような心地がした。京極は事務所を出て、つまり九条の監視を外れたので、それよりも大切なこと、要するに壬生の居所に関するヒントがつかめたということだろう。

逃亡する犬飼らも久我も、食べ物のリクエストからして育ちはあまり恵まれたものではなさそうだ。こういった描写をさりげなく入れてくるところは、真鍋先生の巧いところだ。日本において、ひとが進路を選ぶとき、恵まれた環境で育つことはひとつのアドバンテージである。必ずしも全てがそのパターンとは限らないが、半グレや不良への道を選択せざるをえないようなところもあるのかなーというのを、やんわりと感じた。

そして九条、壬生、犬飼が集まる。ここから、どう展開していくのか。壬生は京極を殺さんとしているが、もし犬飼がそれを聞いたら、自身を駒として利用するのではないか、という疑念が再び浮上することだろう。そして菅原も、いったん手を組んではいるが、どう動くのかはちょっと読めない。京極の絶対性があって、今回のような強さのピラミッドが形成されているところはあるので、前回出てきた伏見組の舎弟やナンバー2の動きも含めて、目を見張るところだ。

単行本で10巻くらいというと、ウシジマくんでいうところの顎戸三兄弟の話が入ってくるあたりになるが、九条の場合はそれくらいの大きな展開になっていくのかどうか。来週も掲載があるようなので、楽しみにしよう。

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