◆感想『九条の大罪』第44審「事件の真相」④

今週のお話

ついに娘の暗証番号を解いた嵐山。しかも、その日は娘の命日だった……。

場面は又林と深見とのやりとりに戻る。嵐山が娘の事件を独自捜査している理由についてである。又林いわく、実行犯である犬飼たちの地元と被害者である嵐山の娘の自宅との接点がなく、面識がないという。そのため、壬生や京極からの指示ではないかと疑っているのだ。それを聞いた深見は「それこそ不可解ですよ。理由がない。」ともっともな意見を出す。又林はやや呆れた様子で「刑事の勘」を挙げる。深見は現実主義なようで、裁判も終わり刑も確定しているのにできることなど見いだせないと言った様子だ。それに対し、又林は嵐山家が警察一家であることを話しだす。昇進について、同期に先を越された悔しさや挫折感が、娘への執着を一層強くしたのではないかという。

娘のスマホから連絡先をあたり、話を聞けないかと、子持ちの女性を公園に呼び出す。2,30代ほどの女性は衣笠といい、ベビーカーに乗っている赤ちゃんはやりとりの間、ギャン泣きしているが放置している。娘である愛美との関係を問われ、気まずそうに「飲み友達」、そこから羽振りのいい男性と飲んで小遣いをもらっていたという。タクシー代3万に驚く嵐山だが、今は1万くらいではないかとスマホをいじりながら言う。赤子を気遣う嵐山だが、泣かせておかないと夜泣きがひどく、隣人に嫌がらせを受けるという。そこから嵐山は、飲み相手の連絡先を尋ねるが、数年ほどで入れ替わってしまうのでわからないという。仕事一本で娘のことを何も知らずにいたものの、何か手がかりになるようなことをさらに尋ねる。値踏みするように嵐山を見たあと、衣笠は娘の裏アカを教える。検索して見つけたページを嵐山に見せ、礼を言って去ろうとする嵐山に金をせびる。額といえば、若かった頃にもらっていた移動代の3万である。嵐山は見返りを求める衣笠に対し、簡単に金を稼いできた弊害だと悪態をつく。衣笠も悪態を突き返し、別れる。

引き続き公園で嵐山は娘の裏アカを見ている。不安定な精神と自己肯定感の低さを表すつぶやきの中に、「こやシャン」という名を見つける。こやシャンの携帯に奥さんと子供との写真があり、自分が不倫相手だったこと、妊娠したものの堕胎したこと、それを父である嵐山に伝えようとしていたことが赤裸々に書かれていた。嵐山は「パパに電話した。」というつぶやきを見て、当時のことを思い出す。仕事が忙しく娘からの電話を無視したこと、そして、その一週間後に娘が殺されたことを……。嵐山は頭を抱え、項垂れる。そして、娘と映る色黒で金髪の男。場面は変わり、重ねるようにトゥールビヨンの小山。ふいに出てくるようだが、ほくろの場所などが「こやシャン」と同じだ。つまり、こやシャンはトゥールビヨンの小山だったのだ。彼は京極の厚意だといって、愛人用だった空き部屋を九条に勧めるのであった。

感想

小山と娘(愛美)とのつながりが今回明らかになった。そして、小山は京極に世話になっている。しかし、写真を見るとこの10年でずいぶん小山は金回りがよくなったようだ。となると、京極の世話になり始めたのは愛美の事件がきっかけなのか?など、各キャラクターを掘り下げる内容になりそうである。また、愛人用の空き部屋に九条をあてがうのにも何か意図を感じる。にしても、愛美の裏アカのアイコンがしずくの刺青のキャラクターと同じで、10年前から流行していたキャラクターなのか……、しかも精神的に追い詰められた状態の女性が表出するアイコンだという事実に、なんともいえない気持ちにさせられる。

今回のことから、事件の真相は、これまで登場したキャラクターが複雑に絡んでいそうである。今回はその入り口がわかったにすぎない。嵐山の刑事の勘は、後からどうなるわけでもないのだが、正しかったのだ。その経緯が昇進の失敗であっても、確実に真実に近づいている。しかしながら、その過程で嵐山は、家族を顧みず仕事に邁進していた自身を悔いる様子をみせてもいる。

そして、今回の「事件の真相」は嵐山の娘の件が10年前に起きたことをかんがみると、他の事件の解決の糸口になったり、人物同士のむすびつきが強くなっていくなど、今後の展開において重要なシリーズになるような気もする。今回の話がどう着地するのか、来週も見守りたい。

コメント

WP Twitter Auto Publish Powered By : XYZScripts.com