夏が近づくと、タイ料理をたべたくなる。暑いのに熱いもの。これは毎年ふしぎで、涼しくなってくるとたちまち足が遠のいてしまう。インド料理(ほぼカレー)は年中食べているのに、タイ料理はどうしてそうじゃないんだろう。

幸か不幸か、今年はこの時期でもうれつに暑くなってきたので、タイ料理のシーズンに入った。久方ぶりに食べるガパオの辛さにしびれ、タイ米独特の食感になつかしさを覚える。端がかりかりの目玉焼きもわたしごのみだ。デザートはココナッツミルクに小粒のタピオカ。そういえば、タピオカは若い人のあいだで再燃しているという。

食べ終わったところで、目の前のテーブルに父娘とおぼしきふたりぐみが掛けた。父親の顔はみえないが、なかなか恰幅がよい。むすめの方は空になった容器を持っている。見たところゴンチャだ。行列のタピオカ屋。

さらに目線をおろすと、ぱっくりと足を広げて座っている。学校指定のスカートは短く揃えられて、おせじにも品があるとはいいがたい。むすめは、そのままの足でめしをたいらげる。父親がむすめの足をとがめることはなかった。

父親がひと足早く席を立ち、むすめはしばらくわたしの方を見つめていた。視線に気づかれたのだろうか。われながら、だいぶ見入っていたと思う。おかげで一緒にきた人とぜんぜん会話をしていない。むすめがわたしの方へやってくる。なにか声でもかけられるのかと思って見ていると、父親の掛けていた椅子をなおして店を出ていった。

自分の足には無頓着なむすめが、父親の、出しっぱなしの椅子は気にかかるという。ひとは見かけによらないし、気にするところもさまざまだ。すっかりあっけにとられてしまう。

店を出てしばらく歩き、日傘を持っていないのに気づく。あわてて戻ると、父娘のいたところには新しい客がすわっていた。

今日も読んでくださり、ありがとうございます。また涼しくなっちゃいましたね、ありがたいんですけれども。