エッセイ

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■地途切れて

『罪の重さは何で決まるのか』を読んでいるとき、被害者はこれまでの生と地続きで生きていくことはむずかしいという一文があった。最近ではないが、池袋の自動車事故で妻と娘を亡くした男性のことが頭をよぎった。愛する家族を失い、再発を防止するための運動...
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■死守したい、この時間

自分でコントロールしきれないものはストレスが大きく、しごとはその際たるものだ……と思っている。出勤時に強い決意で早く帰ろうと思いながら、働いているうちにそのことを忘れたり、なんだか帰っていいのかよくないのかわからない状況になったりして、遅く...
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■しあわせな外食と、変えるために変われること

だいすきなカレー屋さんがある。最近はなかなか行けていないが、ここで食べると他の食事では感じられないレベルで「いま、生きている……!!!」と実感する。そもそものレベルが高くおいしいのと、お店の雰囲気と、あとは、わたしが個人店のカレーをすきにな...
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■横の旅

縦の旅行、横の旅行という例えがある。これはカズオ・イシグロのインタビューが有名なのかな、富裕層というのは、自分と似た境遇の人間のいる、別の場所を旅する「縦の旅行」しかしないが、一方で分断する現代において必要なのは、自分の身近に存在しながらも...
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■手を動かすべし

5月の下旬からアラビア語を勉強しはじめた。当然読めないので、まずは文字からである。右から書くのがそもそも慣れないし、書き順それなの?という気持ちにもなる。しかも、文字同士をつなげて書くルールがあるようで、文字がくっつくと形が少し変わるものが...
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■文字の音、いざない

アラビア書道の展示をGWに見てきてから、そのことをどうも忘れられないまま過ごしている。作品が美しかったのはもちろんだが、文字そのものが絵のようでうつくしいのだ。ただ美しい・おもしろいのは他の展示もいっしょで、しかし「どうも忘れられない」とい...
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■「逸れる」までの助走

しごとの時間や量のことで悩んでいることは今にはじまったことではないが、行きつけのお店でちょっと生き方の話になり「そのうち決めるタイミングはくると思うけど、それまでにちゃんと考えておけることが大事なんじゃないかな」という話があった。それらの悩...
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■背に羽織る

とくにハヤカワSFで顕著なのだが、装丁が好みの版を買うこともあり、これまで本はむきだしで読んできた。なんならカバーや帯を外して持ち歩くこともあれば、教科書の表紙や帯は、買ってすぐさま外して捨てていた。職場におなじく読書のすきな方がおられ、ブ...
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■読めない文字の妙

フライヤーの画像をみて心が奮い立ってしまい、国立民族学博物館の「アラビア書道」の展示を見てきた。大々的に行う企画展示ではなく、常設展の奥に特別展示コーナーがあり、ちんまりと解説と作品とが並んでいたのだが、これが前回行った客家の展示と同じく、...
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■新天地へ

今の生活に決定的な不満はないのだが、なんだか新しいことをしたい。今のしごとも6年目に入り、できたての会社もそれなりに人が増えてきて、業界にしては収入をあげることもできた。人や会社を育てていくことが意義深いというのは理解しているつもりであり、...