先週分はこちら。
土日月の三連休は危険だ。スピリッツの発売が土曜にずれこむので、うっかりしていると土曜日にスピリッツを買うのを忘れる。今日は忘れなかったので、えらかった。
先週滑皮と丑嶋の主従が継続しているのか疑問だ、ということを書いたが、いちおう今回分を読むと継続中のようだ。滑皮の持つカードは鳶田、シシック幹部、そして戌亥である。対して丑嶋は柄崎と戌亥だが、戌亥のポジションもだいぶ黒い。
ホテル暮らしをする丑嶋に滑皮が詰め寄る。丑嶋の泊まる部屋の番号までおさえている。なぜ知っているかといえば、24時間人を使って丑嶋たちを監視しているという。「飼い犬が俺から逃げれると思ってンのか?」のことばを黙って聞く丑嶋。鳶田を廊下に残し、滑皮は丑嶋の部屋へ。
風呂敷に包まれた中身を滑皮は問う。「飯です。」と丑嶋が答えると、曲げわっぱに入った「30品目のおかず」のごとき弁当が描かれる。弁当の主は滑皮がスルスルと語るように、柄崎の女か母親だろう。なにせ24時間監視しているのだから、ここで見当違いなことを言っていたら監視の意味がない。丑嶋は沈黙している。滑皮は弁当をはじき、床にひっくり返す。丑嶋の反応はない。反応することでいいことなど、ひとつもないからだ。
「テメェだけ長生きするつもりか?人殺し。」
滑皮の台詞に動じない丑嶋。用件だけをさっさと伝えてほしいであろう丑嶋は「何の用スか?」と尋ねる。滑皮はどこかのロッカーキーを差し出し、次頁、見開きで豹堂の殺害を命じる。滑皮の前に正座する丑嶋。以前も描かれた飼い主と犬の関係がそのまま継続していることがわかる。貸しロッカーのときはフラットな横向きから描かれていたが、こんどは縦向き、しかも俯瞰の角度である。きれいに足を揃えて正座する丑嶋が小さく、殺害を命じた滑皮を大きく見せている。
丑嶋は拒否するも「お前は断れない。」と一蹴。自分の熊倉と獅子谷を殺したあげく、後始末を滑皮にやらせた丑嶋のことは、殺しても殺し足りないという。相当な憎悪が滑皮からは感じられる。柄崎と戌亥がジムで会話していたときの「丑嶋マグネター説」が思い起こされる。がぜん強く出ていても、どこかで滑皮は丑嶋を恐れている。そうでなければこんな要求のしかたはしない。
「滑皮さん…」何かを言い出そうとする丑嶋のことばは、すぐさま滑皮に潰されてしまう。丑嶋の命は自分が握っている。生かす理由が欲しいなら黙って命令に従えと言い、滑皮は部屋を去る。
不服な表情で座る丑嶋。滑皮が去ってから、ひっくり返された弁当を怒りながら食う。心中は初期と変わらず「くそったれっ!!!」であろう。
車に戻った滑皮は鳶田に「丑嶋を鉄砲玉にして大丈夫なのか。」と問われる。自分に対し反感を持つ丑嶋に、銃をもたせていいのかと。手を噛みつかれるようなことはないのかと、鳶田は案じているのかもしれない。滑皮は、感情を抜きにしたらあれほど最適な鉄砲玉はいないと答える。滑皮としては、自分の兄貴分・熊倉と可愛がっていた舎弟・獅子谷を消した丑嶋を今すぐ殺したいはずだ。しかも獅子谷にいたっては、死体の処理を滑皮がやっている。並々ならぬ憎悪があることは想像に難くない。殺しても殺しきれないということばをぶつけたのも、そういったことに由来している気がする。丑嶋は滑皮を「くそったれ!!!」と思っているが、それは滑皮の方とて同じなのかもしれない。実力を認めている、というのが滑皮はあるけれども、互いの根本に憎悪感情があることは違いないだろう。
獅子谷がオープン予定だったキャバクラのテナントで滑皮はシシックの幹部と待ち合わせている。店の続きは幹部たちがやってはどうかと、冗談のように言ってのける。ツーブロックの幹部が小さく肯定し、話は本題に。幹部たちは豹堂の舎弟・巳池を拉致していたのだ。一人で歩いているところを盗難車で轢いたので足は付かないという。テープで拘束され、床に転がる巳池。何かを喋っているようだが、テープのせいで判然としない。
滑皮が口元のテープを剥がすと、巳池は思いがけないといったようすで「テメェ滑皮ァ!?」と叫ぶ。幹部たちは既に捌けているようだ。こんなことをしてただではすまないと巳池は凄むが、自分の心配をしたらどうかと滑皮は冷たい目線で話す。巳池は足が付いていないと思い込んでいただろうから、寝耳に水といったところか。戌亥を尾行していたときもそうだったが、豹堂の脇の甘さがここで出ているのだろうか……。しかしこのコマ、空間の描き方がちょっとふしぎなせいで、巳池が床から浮いて見える。
滑皮は電動ノコギリのようなものを出し「梶尾のことを洗いざらし話していただきますよ。」と言う。その口元はノコギリを振り上げているせいでわからない。そこが不気味だ。制止せんとする巳池の叫びも虚しく、迷いなく刃をさしこむ。巳池の断末魔が響く。にしてもこのテナントの床、汚れだらけである。仮にこんなところにキャバクラを開いて、一体うまくいくのだろうか?事故物件もいいところである。
43巻によると、巳池と滑皮は部屋住みの期間が被っており、同期のような間柄である。ことあるごとに因縁をつけてきて鬱陶しかったが、悔しさはバネになる、いい踏み台だ、と滑皮は過去回で述懐している。自分の道を阻むやつは一人残らず潰すと宣言していたので、その一環で巳池も消されることとなったと考えるとおさまりもいい。
場面は丑嶋サイドに戻り、ロッカー前へ。周りを見渡し、滑皮から受け取った鍵で荷物を回収する。布に包まれたそれを武器だと認識するのに、時間はかからないだろう。丑嶋は悩ましそうな目線を布へ送る。ホテルで拳銃を広げ、沈黙して何かを思うシーンで今週は終わる。そしてなんと次号も続く。すごい、すごいです。だいたいこういうときは休載をはさむというのに、続くのです。
予想どおり組の抗争に巻き込まれた丑嶋。獅子谷のタタキのときといい「ちょうどいいのいるわ」という感じでインスタントに命令されてしまうあたり、丑嶋の持つ権力の弱まりをまざまざと見せつけられる。初期に掲げていた「奪うか奪われるなら、俺は奪う方を選ぶ。」という標語も、ウシジマくん編に入ってから見る影もなくなりつつある。人と時間がもたらす変化は残酷である。このまま丑嶋は搾り取られて終わってしまうのだろうか?それも因果として十分な説得力をもつが、やはりもう一波乱起こってほしいと願ってやまないのが読者というものだ。
さて、この抗争を悩ましくかき乱しているのは何を隠そう、三者すべてに手を差し伸べる戌亥である。ウシジマくん編はそこかしこに「情報を得たものが戦いを制す」というせりふが散見される。そのキーとなるのが戌亥というキャラクターである。今後どうなっていくか、最終的に彼がどうなるのかというのも、見逃せないポイントである。
それにしても丑嶋は素直に豹堂を殺すのか、それとも別の誰かを撃ち抜くのだろうか……。鳶田が丑嶋を指名したことを案じる気持ちは非常によくわかる。しかし滑皮は敢えて丑嶋に命じている。裏切らないという自信がなければ、自らに反抗心をもつ輩に依頼などできるはずがない。やはりそこは高田や小百合を抑えられていることもあるのか。それともまた別の根拠をもつのか。
うーんどうなるのだろう。このまま犬の人生で終わってしまうのか。しかしそれでは物語として盛り上がらないしなあ。どこかでハンドルを切って逆走してほしいものですね。しばらくご無沙汰の菊池一家も気になるところですが、とりあえずは内部抗争が終わるまで登場しない運びなのかしら。
再来週も楽しみです。来週はありませんので、ご注意を。
丑嶋から滑皮へのヘイトが初めて出てくるのは2巻168頁、まだ元気な熊倉兄貴がえらく昔のように感じる。
巳池と滑皮の部屋住み時代のことが描かれている43巻。
コメント
[…] 前回分はこちら。二週間待ちわびたぞ丑嶋ァ! ということで10月も幸先よく(?)スタート。さらに物語は展開していく。 まずは、巳池の自白音声を冷めた目で聞く滑皮と鳶田。「油紙 […]