今週のお話
体育館に戻り、小山とおぼしき狼の被り物をした男と、マットにいる女性(泣きぼくろの感じからももよだろうか?)と交わっている。男たちは仮面をつけており、その様子を見ながら待っているといった異様な光景が繰り広げられているが、数馬は校庭から戻って来たようで、その様子を無感情に眺めるのであった。
場面は九条と烏丸に移り、居酒屋にきている。接見後の麦焼酎が沁みるという九条に対し、烏丸は目も合わせず応じる。そのようすが気になった九条は場所を変える。コーヒーふたつをふたりの間において、烏丸の心情を尋ねる。烏丸は、伏見との接見を断るようにとの忠告を無視したことが気になっているようだ。伏見の接見に行ったことについて九条は、自分が引き受けないと公正な弁護を受けられないではないか、という。それに対し烏丸は「公正な弁護ってなんですか?」と問う。つづけて、九条を案じているのだと烏丸はいう。このままいけば、弁護士バッジが飛ぶくらいではすまされないと。コンビニのコーヒーをとり、「もう付き合いきれないです。」と烏丸はその場を後にする。ひとつになったコーヒーと並ぶように、九条は取り残される。
場面は数馬に戻る。同じワンルームアパートだが、依頼されて脱毛広告動画のチェックし、キャッチコピーや撮り方のことなどをやや上からの口調で助言している。その後、以前千歌に女の子の斡旋を依頼していた美容外科の医師が、数馬にネット広告含めて美容液の開発を打診している。韓国の美容系インフルエンサーを用意するので、リモート会議をセッティングするという数馬に、医師も感心しているようだ。同僚はこの短期間で起業した数馬に驚き、その方法を尋ねる。数馬は、稼いだ100万を元手に、壬生から草コイン(知名度の低い仮想通貨)で儲けている男を紹介してもらい、分散投資したところ、そのひとつが当たって90倍になったと。それを元手に初期投資が少なく、在庫等のリスクも少ないネット広告ビジネスを始めたという。飲食店が失敗しやすい要因や、スマホ1つで仕事ができることの良さを薄っぺらく語り、金が溜まったらタワマンに引っ越すなどと豪語するも、同僚はスマホをみつつ相槌をうつのであった。
数馬は、壬生に会社がうまくいっていることを褒められ、以前壬生とやりとりしていた「会社」の売買をめざしているようだ。しかし、軌道に乗る一方で、金持ちとは何ぞやといったことを数馬は感じており、裸の運動会の下品さに辟易したという。壬生は「奪っちゃいけないものを金で買う守銭奴と売っちゃいけないものをお金で売る馬鹿女だ。」と一蹴し、志のない人間など相手にするなと助言するのだった。
九条の弁護士事務所に場面は変わり、通話していた案件について、烏丸に意見を乞うものの、すでにその姿はないのだった……。
感想
数馬は壬生の助言を忠実に受け、「安く買って高く売る」を会社で実践しようとしている。やろうと思えば一番大きなリスクをかけられる覚悟が伝わる。一方で、壬生は「逮捕歴のない人間に任せたい仕事」のために数馬を見定めている。もう少し育てるのに時間がかかるのかな。薬を運ぶくらいのところなら曽我部にもやらせていたわけだし、ここまで引っ張るならマネーロンダリングとかかなあ。
今回のポイントは壬生の「奪っちゃいけないものを金で買う守銭奴」「売っちゃいけないものをお金で売る馬鹿女」という、富裕層男性とお金を求める女性をあらわしたセリフだろう。『闇金ウシジマくん』の「テレクラくん」でも似たようなセリフがあったが、この「愚者の偶像」編では、「金持ちになるってなんなんですかね。」と、どこか想定していた金持ちと違ったという数馬の心情がみてとれる。また、そこまで上り詰めることについても、どこか表面的なロードマップを進んでいくことで成り立ってしまいそうなところがある。そこにおける数馬も、どこか薄っぺらい世間を語っている。また、千歌についても数馬の思うところの清廉な女性ではなく、これも偶像といってさしつかえないだろう。そして、千歌に女性の斡旋を依頼した医師と、数馬に広告を依頼した医師が同じであるところから、富裕層の出す金がそういった層を経由していくんだなぁ〜ということがよく伝わってきた。
あとは、烏丸かなぁ〜。九条のいう「公正な弁護」は万人の権利としての「公正さ」で、烏丸の「公正な弁護」は、弁護にあたっては相互に「公正であるべき」という不文律としての「公正さ」なのかなぁ〜ということを考えていた。公正の定義もいろいろな議論が繰り広げてきたけれども、何かそこのところは、九条と烏丸で異なっているのだろうなあ〜。この、公正さに関する考えが異なるというのは、弁護士をやっていくうえでポリシーの違いになってくるだろう。そこが解消しえない時点で、九条のところに戻ってくるのには難しさがあるように思われる。しかし、そうなると烏丸はどういう登場の仕方をするのだろう?柄崎ではないが、なんやかんや戻ってくるような展開もありえるのだろうか。
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