そもそもつきあいが悪く、がやがやしたところが苦手なのであまり言う場面もないのだけれど、じつはお酒がすきだ。お酒を飲むとたのしいきもちになって、上機嫌になる。飲酒したときの機嫌のよさはしらふのときとはちがい、「上機嫌の深奥」に入りこんだような感覚がある。こころもからだもきもちがいい。

しかし残念なことに、わたしはべらぼうに弱い。1杯飲めば限界に達してしまうので、はじめの1杯がいちばんの勝負どころだ。機械的に「生、人数分で!」と言うような場に参加してしまうと、不本意な苦行を強いられ、以後まったく飲めなくなってしまう。

最初で最後の1杯を決めるのは、必殺技と似ている。たたかいの中で1回きりしか発動できない技を、どこで使うのか。最初はソフトドリンクにしておいて、油断したところに撃ち込むのか、それとも最初に一発かましておいて、静観するべきか。そもそもどの技を使おうか……なやましい。「生、人数分で!」は悪意なくその機会を奪ってしまうので、そういった飲み会には行かない。

こぢんまりとした個人経営の食事処やバーで、少人数でのんびりお酒を飲むのがすきだ。たいがいこういったお店のマスターはお酒がすきで、ラインナップにこだわりをもっている。見たこともない銘柄が、たくさん書いてある。意味のわからない単語は、素人丸出しで「○○ってなんですか?」と聞いてしまう。ひとつをきめるまでに、とても時間がかかる。そして時間をかけて決めた1杯を、ゆっくりと愉しむ(ぐびぐびいくと具合が悪くなるので)。しかしその隣で、同行者がつぎつぎと酒を頼んではあおっている姿を見ると、やはりアルコールを積極的に分解できるからだがうらやましくなる。一緒にいる時間だけでいいから、そのからだを分けてはもらえないだろうか……そんなことを思うときもある。

しかし他方で、こう考えることもできる。1杯しか飲めないのならば、次の機会をつくればいい。そのときに、べつのものを頼めばいい。重ねて通うことで、店の風土やこだわりといった別世界に、何度でも飛び込むことができる。あらたなものとの時間をちびちびと味わえるのは、けちけちとしたわたしの性格にうってつけかもしれない。

今日も読んでくださり、ありがとうございました。投薬しているのであんまり飲まない方がいいのですけれどね。たまには、よいではないか。