いつもおすすめの本を教えてくれる詩音氏に、いろいろあって江國香織の『きらきらひかる』を勧めた。読書習慣のない友人がさいきん読書をはじめ、ぜひ読んでほしくて買った本だ。

読書家の彼女はもちろん『きらきらひかる』は読了済である。しかし同じ本でも、人生のどのタイミングで読むのかで印象はまったく異なる。そのときによって、世界に飛び込むときの自分のステータスがちがうからだ。わたしはこの『きらきらひかる』という小説に中学のころ出会ったのだが、数年に一度なんとなく読みたくなって、読み返している。

結婚を程遠い(いまでも遠く無縁のものだと思っているけれど、今よりもずっと)「謎のもの」として捉え、クラスの腐女子から「BL」という世界を教えてもらい「この小説はホモが出てくる」と『きらきらひかる』を紹介された中学時代(いま思うと中学生というのはこわいものしらずである)、主人公・笑子の情緒不安定さと睦月の力及ばなさの双方に共感した大学時代、そして今回、笑子の夫で同性愛者の睦月……の恋人の紺が、夫婦を中継し、関係を安定させているという一見いびつな構造をしていながら、作者はあとがきにおいて「ふつうの恋愛小説を書こうと思いました」と言ってのける。長らくこの一言が引っかかっていたのだけれど、小説全体を通して、恋愛そのものがもつ脆さと人間の本質的な孤独のことを言っているのだと気づいた。ようやくあとがきと本編が、一本の糸でつながったのだ。

たまたま今の彼女に『きらきらひかる』は響いたようで、たいへん丁寧な感想とお礼をいただいた。読書量もことばの豊かさも感性の細やかさもまったく敵わない相手に感謝されると、少しは平素の恩返しができたのかなというきもちになる。わたしは遅読で読む頻度や量にムラもあるので他人におすすめできるほど本を読んではいないのだけれど、何度か読み込んだものがよろこばれるのはうれしい。おすすめしたRPGをともだちがあそんでくれたときのことを思い出す……。

今日も読んでくださり、ありがとうございます。本にかぎらず、だいすきな世界を共有して、べつの角度から意見や感想をもらえることが、たのしくてうれしいです。