去年末、周りの音を遮るためにイヤホンを買った。せいぜい地元にいるときは図書館の音が気になるときと、音ゲーをあそぶときくらいしか日の目を見なかったのだが、ひさびさに音を遮りたいタイミングがあってイヤホンをつけた。
通勤ラッシュの駅である。先週、用事があって新宿に行ったのだ。
新宿。
日本の降りたくない駅ランキング堂々一位だ(ちなみに、同率一位が渋谷と池袋だ)。それがちょうど退勤後、ラッシュのスタートにあたるタイミングで最寄駅に来てしまった。一糸乱れずおなじ方向へ向かっていく人間たちはもはや、ひとつの巨大ないきものに見える。階段は登る人で満員、降りるわたしはただただその光景を見守る。誰のものともしれないざわつき。その集積が不安を煽る。人の多いところがだめなのだ。すかさずイヤホンを着けると喧騒は緩和され、かわりにじぶんの心臓の鼓動がよく聞こえた。
どきどきどきどき。いつもよりすこし速い……気がする。
階段を降りていちばん後ろの車両に乗り込む。始発電車だからか、人はまばらでしんとしている。角の席に座り、ほっと息をつく。まだまだ鼓動は大きい。軽く吐き気もしてきた。さいわい電車が混雑しなかったので、徐々に復活していった。途中で降りることがなくてよかった。いちど降りると次に乗れるようになるまで時間がかかってしまう。
新宿。
いつなんどきでも人が多い。その多さたるや、思わずあっぱれと言ってしまいそうなほどだ。イヤホンをしていてもざわざわとした音が聞こえる。ウシジマくんでいうところの「ニギ……ニギ……」そのものだ。比較的人のいない道を縫いながら、目的地に着いた。もうすっかり疲れ果てていた。
ホテルに併設された閑静なカフェに入る。すでに相手はみな集合していた。いいところだなと思ったのもつかの間、ほどなくして10人ほどの女性がやってくる。たちまちかしましい。感嘆、笑い、大盛況。目の前にいる相手の話がうまく聞き取れない。音、音、音。イヤホンをするわけにもいかない。
おかげで次の会合の日付も話し合いをしたはずの役割分担も忘れ、翌日さっそく聞く羽目になったのだった。おせわさま。やっぱり音が多いところはつらい。
今日も読んでくださり、ありがとうございます。通勤でも通学でも新宿をつかえるひとはほんとうに尊敬します。
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