きのうの通勤途中に、だいこんが落ちていた。それもまるまる一本が、自転車用道路の脇で、ひかえめに佇んでいた。後続車もあって止まることはできなかったのだが、あのだいこんがどこからやってきたのかが気になってしかたがなかった。たまには考えを遊ばせてみようと思い、いろいろと考えてみた。
まず浮かんだのは、自転車で買い物をしたひとが落としてしまったケースだ。しかしだいこんくらい重量のあるものを落として、気づかず走り去ってしまえるひとというのは、普段からそうとう鍛えているひとか、自分の買ったものに興味のないひとのいずれかのような気がする。もしくはだいこんの主が相当な潔癖症で「道路に落ちたものなど食えぬ」と思っているのならば、道端に置かれているのもわからなくもない。
次に考えたのは、野菜を運ぶトラックからこぼれてしまったケース。だいこん一本落ちてもトラックの運転手は気がつかないし、割と現実味があった。しかしそれ以上の発展がなくて、なんだかつまらない。
そのあとに考えたのは、深夜にこの通路でレースがあって、相手を妨害するアイテムとしてだいこんが置かれたケースだ。要するにマリオカートのバナナ(キャラクターがバナナにぶつかると、スピンして減速してしまう)である。現実味はないけれど、わくわくはする。ほんとうに、こんな狭い道で熾烈なたたかいが繰り広げられているとしたら、日中はのどかで平和な町、夜は走り屋(自転車だけれど)のサーキットと、町がふたつの顔をもつことになる。ここは東京のなかでも畑の面積が多いそうなので、アイテムには野菜を採用している。そしてレースが終わったあと、回収してみんなで食べる。野菜だけの素朴なみそしるや、煮物がふるまわれる。朝採れの野菜なので、新鮮でおいしい。終わるとみな別れ、明日にそなえて眠る。そのとき回収しそこねてしまったのが、わたしが目撃した大根だったのだ……よし、これでいこう。
ちょっとしたできごとも、想像をふくらませると物語のきっかけになる。こういうことがあると、日々がなんとなく明るくなって、すくわれたようなきもちになる。客観的にみるとくだらない戯れにすぎないのだが、非現実的な物語を想像するのはいつだって楽しい。同時にこういう時間が減っていたことに気づき、少しだけさびしくもあった。
今日も読んでくださり、ありがとうございます。帰りに通ったらもうだいこんはなかったです。
コメント
[…] く、あわない。筋トレを続けた先にある足の線の美しさとか、それこそ道端に落ちていただいこんで空想をしているとか、そういう話は飲み会むきではない。もっと地上に足のついた、 […]