ほぼ毎日夢を見るのだけど、だいたい2回に1回の割合でこわい夢を見る。内容は追いかけられたり、ともだちが殺されそうになったり、奇妙なシチュエーション下で理解できないことが起こったりと、いろいろである。
怖いことが迫ったときは言わなければいけないことば、たとえば「助けて」や「この人は、ほんとうはすごくあぶないんです」など、頭に浮かんでくるのだけれど、あまりに怖くて声が出てくれない。じっさいの人生で声が出ないほど怖い思いをしたことはない(と思う)のだが、なぜか夢のなかではほぼ100%声が出ない。そのせいか息も詰まって苦しい。起きると汗でびしょびしょになっていて、飛び起きたときに息ができるとほっとする。
話は変わり、さかなを食べることが多い。難しくないさかなは内臓をとって洗うこともある。おとなになっても、いきものの分解は好奇心を刺激してくる。解体して中を覗くのはやはりどこか背徳的でエロティックだ。水道の水を口から流してやると、きれいになるのでもっとよく見える。内臓のあったところから血が排水溝へ流れる。さかなの血はサラサラだ。健康診断のときに吸い取られる自分の血液はもう少しドロっとしているし、案外黒い。
ところで、近年プラスチックが糾弾されるようになった。くじらやさかなが、えさと間違えて食べてしまうという。わたしはこれを読んだとき、自分の小さな手で解体されたさかなの空洞にプラスチックが詰まるのを想像する。夢の中で声が出なくなったときの喉の詰まりと、よく似ている気がした。浜辺になにげなく投棄されたプラスチック片が風に吹かれ、沖に落ちてさかなの気道をふさぐ。循環がとどこおる。死ぬ。さぞ、苦しかったことだろう。
さかなは夢を見るのだろうか。目がさめて、えらから空気が抜けて、ほっとする瞬間はあるのだろうか。わたしは何度もそんな経験をしている。喉にビニールが詰まるような夢。さかなは、夢を見るのだろうか。
考えても答えは出ないというのに、どうしても考えてしまう日がある。
読んでくださり、ありがとうございます。声の出ない夢はほんとうに苦しい。
コメント