ひさしぶりに、しごとで精神科病院にいってきた。入院の病棟もたくさんある病院で、近年建て直したのか受付も通路もきれいである。木や自然を主軸としたデザインは階層ごとに色合いが異なっている。会計など機械による無人精算であった。入院をもつ病院特有の湿っぽさや消毒液のしみこんだようなにおいもなく、今はそういう感じなのかなと思う。これは行ったことのある人でないとわかりにくいと思うが、老人ホームのにおいにも似ているかもしれない。とにかくなんだかふしぎな消毒のかおりがするのだ。
該当の病棟でインターホンを押し、用件を伝えると、鍵をもったスタッフに案内された。着席するまでの間でも、鍵付きの扉がふたつあった。ひとつ通り抜けると、昔の病院のような薄い水色の床と壁、最小限の机と椅子、なんだか広い廊下といった、昔ながらの光景がみえてきた。
精神保健の資格をとるにあたっては精神科病院での実習が必要になるのだが、それ以来の精神科病院だった。最初は「その頃とはだいぶ違ってクリーンでカジュアルな感じになったんだな」と思ったが、奥まで入ってみると「そんなに変わらないのかな」と思った。会議だ。ぞろぞろ人が入る。
「入院中は落ち着いているんです」と話があるも、入院前に荒れているから病院にきているわけで、退院後を見据えた対策を先読みして打っていかなければ、また同じことが繰り返されてしまうのではないか。これって精神科病院だけではなくて、触法障害者・高齢者にも似たようなことがいえそうだな、などと、あまりそのときは関係のないことも考えていた。
会議を終えて外に出る。地域での生活と断絶された空気が、なんとなく病棟からは感じられた。制限されているからこそ逸脱が起きにくいのかもしれないが、そこにいる患者だけでなく、医療者や看護師、ワーカーといった人々も、地域生活を想定したソリューションまではイメージしにくい印象だった。ただ、この断絶は当人らの責任と単純には言い切れず、歴史と社会のありかたの写し身でもあり、そこに携わるいち職業人としては、こうなっている現状やそうならないための活路について考える必要があるのかなと思う。
読んでくださり、ありがとうございます。自分のところ以外の場所に行くのはそういう意味でもとても勉強になります。精神科や精神保健のことは思うところが多く、この後記事が増えていくかもしれません。
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