『息吹』(著:テッド・チャン、訳:大森望)

実はハードカバーで発売されたときに「おお、テッド・チャンの邦訳が!」と思ったものだが、すぐすぐ手を出せず、文庫版で読むこととなった。おはなし自体は500ページを超える短編集なのだが、おもしろくてぐんぐんページが進んでしまった。

どれもおもしろかったのだが、特にすきなのが「商人と錬金術師の門」と「偽りのない事実、偽りのない気持ち」、「不安は自由のめまい」の3つ。どれも、取り戻せない過去をもった人物がでてくるが、それぞれのアプローチや登場する技術は異なっており、結末もまちまちだ。お話それぞれについて詳しく書くことは避けるが、読了後、なんだか自分の人生を考えてしまったり、人物たちに対してやさしい気持ちになったりした。

自分の日常や想像力ではとうてい追いつけない境地にだいすきなSF作品はあって、まちがいなくそのひとつに入る1冊だった。そして、そういった時間をもつことが自分には必要だなーと、とりたてて理屈はないのだが感じた。テッド・チャンは作品自体がそんなに多くない作家なのだが、近いうちに『あなたの人生の物語』をもう一度読みたい。

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