例の美容院が全焼してから三ヶ月、再開の見通しはまだまだ先らしい。無慈悲なことに、三ヶ月という期間はツーブロックを破壊するのにじゅうぶんすぎる。剃り込んだラインはすっかり失せ、眉上に切った前髪は目に入りはじめる。髪が乾くのにもえげつない時間がかかる。これではただのショートカット。何人かに「今の髪すごく似合ってますよ」と言われる。否、わたしはツーブロックがすきなのだ。

しびれを切らしたわたしは前通っていた美容院に戻って、前の写真を見せて切ってもらった。

「これ、ずいぶんいきましたね。」

「ひとおもいにやっちゃってください。」

慎重なひとなので、これくらいの勢いでお願いする。腕もよく、まじめなひとだ。しばらく期間があくと発生するであろう「どこか別のとこ行ってたんですか」という修羅場展開もなく、自然にあの美容院が燃えたことを話すと、個人で経営しているのでゾッとしていた。そこから経営の話などを掘り下げ、わたしの人生だけでは得られないあらたな知見を得た。

「経営資金を借りるときの銀行はこわい」。役に立つ日が来るかどうかは謎である。

あれよあれよというまにツーブロックが完成した。耳元に指を通す。すり抜ける感覚、上からかぶさる髪のすっきりとしたライン。わたしが求めていたのはこれだ。首元もすっきりして軽い。眉上のバングもなつかしい。頭にまつわりついていたものが斬り落とされた爽快感。深く礼を言い、店を出た。

節分を過ぎたものの、夜はまだまだ冬のおもかげを残している。無防備になった後頭部に冷たい風が通った。かなり剃ったので、ダイレクトアタックだ。三ヶ月間ショートカットでいたのは、季節を考えれば正解だったのかもしれない。冬はショート、あとの季節はツーブロック。こういう棲み分けもいいかもしれない。冬場は人付き合いや寒さのおかげで出費も多いし、髪の毛以外の点でも合理的かもしれない。

いま彼は冬眠から覚めた。おかえりツーブロック。これからしばし、よろしくたのむ。

今日も読んでくださり、ありがとうございます。この200記事めがツーブロックで、2で割れて、なんだかきもちがいい。