◆破壊・分解・大喝采

さいきん、ストレス対処について話すことが多い。対処の仕方にもいろいろあって、問題に向き合って解決を図ろうとしたり、好きなことをして気分を発散したり、すべてを放り投げて寝たりといろいろある。

読書をする、(ポケモンGOで)歩く、音楽ゲームをするなどなど、わたしも対処の方法をいろいろ持ってはいるけれど、中でもいちばんすっきりするのは「いきものを分解する」ことである。

ストレスがたまると破壊衝動が猛烈に高まる。読書やゲームで解消できるストレスというのは、ほんとうに小さい段階だけだ。とかく怒りに満ち溢れ、すべてを破壊したくなる。しかし幼い頃より怒りというものをうまく出せなかったわたしは、どなったり物や人にあたったりといった、ポピュラーな出し方ができない。小学生の頃だったか、猫を惨殺した少年が捕まったというニュースを見たが、変わり果てた猫の姿を見るほどの肝は座っていなかったし、さすがに人道的にまずいと思っていた。

それでも最後に辿り着いたのが、少年とおんなじで、いきものを傷つけることだった。ただし、虫である。

小学生のころ、庭にあったアリの巣穴に、家にあった食材をぐちゃぐちゃに混ぜてレンジで加熱したものを注ぎ込んだことがある。踏み殺すだけでは満足しなかったのである。小麦粉ベースでげろみたいな色をしていたし、においもなかなかのものだった。巣に戻るアリたちは人工げろに沈んでいった。親に見つかってはまずいと思い、砂場の土をスコップで掘ってかぶせた。不自然な盛り土からどろどろの物体が漏れていたことを、よく覚えている。さすがにそのあとで罪悪感がつのり、アリに報復される夢を見た。こわくなって、一回きりでやめた。その後はいくら切っても死なないみみずを泥遊び用のナイフで切っていた。

今はどうしているかというと、みみずも切らず、アリも踏んで殺さず、もっぱら料理というしごく合理的なやり方でいきものを分解している。肉はたいがい分解されて売っているしそもそもあまり食べないので、さかなでやる。豆あじの内臓を取ったりえびの背わたを取ったり貝がらからほたてをもぎ取ったり、ひたすら続けているとすっきりしてくる。料理で材料を分解するのは罪でもなんでもない、必要な工程だ。成果物もおいしくいただくことができて、ストレスも解消できて、一石二鳥である。

最近は、一匹で売っているさかなをいちから分解したくなってきている。家に出刃包丁がないので買ったことはないけれど、買うとしたらこんな心境だろう。

「その鯛、一匹ください。なんだかとてもいらいらしていて……!」

今日も読んでくださり、ありがとうございます。分解中にからだのしくみがわかるのも、ひとつのおもしろさです。こういうふうに呼吸するんだとか、首は案外もろいとか、勉強になります。ほんとうです。

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