今週のお話
京極から電話が入り、冬の寒さと九条の居住環境を思い、と前置きした上で勧める。また、小山の顧問契約も月30万で依頼し、他にも顧問契約を結んでほしい会社が多くあるという。とうぜん、その会社はすねに傷のあるところばかりだ。九条はどちらも断り、その場を後にする。京極はそれに対し、「飴がダメなら鞭で打つまでだ」と次の作戦に移行するようである。京極の鞭、自明に他害要素でいっぱいである。
場面は警察陣営に移り、嵐山の出した誤字だらけの書類を部長(炭山)が突き返す。彼が又林の話にあった嵐山の同期で、先に昇進した男だろうか?詳しくは書かれていないので、わからないが、嵐山としては、現場を足で捜査する自分たちの時間を犠牲に、昇進試験の勉強をしているのだろうと嫉妬のような感情が渦巻いているようだ。態度として舌打ちしてしまうのは社会人としてどうかと思うが、まぁ、そういう人たちも一定数いるのだろう。さて、程なくして嵐山に客が来る。前回出てきた衣笠である。時効になった事件の捜査協力に対して見返りを要求し、喧嘩別れのように終わっていた彼女だが、どこか表情はしおらしい。
聞くと、自分の話を聞いてくれたのは愛美(嵐山の娘)だけだったという。そこから、愛美が付き合っていた男がトゥールビヨンの小山(以前は小林だったが、なんらかの事情で変更されたようだ。コミックスで直るのかな)だという話が出てくる。部下である小倉(これも深見だったので名前が変わっている?)から話を聞いた炭山は、10年前の事件を追っていることを咎める。嵐山は自分がやっていることを間違えていると疑えば身体を張れないというが、炭山は正義とは組織が決めたもの、警察は上に逆らうという考えはない閉じた世界だから、裏で気に入らないことを愚痴り、面では本音を押し殺すよう諭す。
その後、場面は壬生と久我へ。20日の完全黙秘をへて、釈放になったようだ。嵐山のしつこさに言及したあと、犬飼がそろそろ出所になることを話している。さいご、流木と受刑者、おそらく話の流れからして犬飼だろう、がやりとりしている。懲役10年を経て、もう外に出られるかと尋ねている。貴重な時間を無駄にして馬鹿だったと言う犬飼に、反省したということかと流木は問う。犬飼は被害者にではなく、自分自身だと。300万円で10年を無駄にさせられたことについて、壬生に3億請求する、のまなければ殺すと決意を固めているのであった。
感想
屋根のある家の提供と、営業活動なしで何件も顧問契約を持ちかけられるというのは、士業を生業にしている人からすればこの上ない好機であるが、この手のものを受け入れることによる危険を九条はわかっているのだろうし、当初から九条は顧問契約を受けず、あくまで単発の事件の刑事弁護を請け負う。そこには九条のスタンスが影響しているのではないかと思われる。すねに傷もち、の企業の顧問になるということは、社会に対して負い目のある事件について弁護をするとか、そういったことが増えてくることは想像に難くない。そうでなくとも、企業を紹介してやったんだから、という言いがかりをつけておおごとに巻き込まれる可能性はある。亀岡も以前いったような「いずれ飲み込まれるわよ」なんていうのは、こういったミーニングなんだろうか。飴がだめなら鞭を、ということなので、今後は京極からの鞭が描かれるのかな。実力行使というわけだろう。
警察陣営については、小山を通して嵐山の事件と京極がつながった。急に衣笠が小山の話をしようと思ったのは、どういった心の動きだったのだろうか。久しぶりに思い出してみて、「そういえば、」となったのだろうか。よくわからないが、情報が手に入ったことは物語としては大きい。しかし、そういった状況に反して炭山は「解決した事件」という。上に上がるために星を増やせというので、そういった上長の指示にも従うべしといったところだろうか。仕事の理屈の上では「解決している」が、嵐山の気持ちとしては「解決していない」。これは九条のいうところの「法律と道徳は分けて考えている」を思い出させる。刑事事件の解決は犯人の逮捕ならびに裁判をもって解決とすることが主だと思うが、そうとは限らないことも多かろう。そういった部分で、仕事のポリシーとして法と道徳を分けているというのは、ある意味合理的な判断なのかもしれない(実際、案件の終わった後では相手方に同情するような顔を見せてはいるし、法的な用件が終わればその後にはタッチしていないことが多い。主体的に関わろうとするのは、なんと言ってよいのかわからないが、よるべのないしずくのような場合だ)。一方、私情としかいえない事情で調べ続けている嵐山というのは、仕事の観点からすると優れた人間とはいいがたい。炭山のいうところは、組織として機能するために必要なことなのである。この事件の着地がどこにいくのかを見届けたく思う。
そして犬飼だ。ほどなくして出所するというので、このあと出てくるのかな。3億という根拠のなさそうな数字とか、こういった不良・半グレ陣営のごたごたとは、ウシジマっぽくてなつかしいな。
さて、次回は15号だというので(掲載が11号)、ちょうど1ヶ月後の3/14に連載再開だろうか。アップした日にはすでに2週間経過しているが、楽しみに待とう。
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