『民族という虚構』(著・小坂敏晶)

タイトルからして「え、どういうこと〜?」と覆わされてほしい物リストにずっと入っていた1冊をようやく手元によびよせる。やや論調はくどい感じもあるが、主張にかんする例え話もわかりやすく、話の筋は理解しやすい。仔細までわかろうとすると、各方面の知識を総動員しながら読んでいく必要があり、結構たいへんな本だと感じた。

民族という概念は今や語られることもまれだが、実は、たどっていくとそんなものは根拠がなかったり、あとづけだったりする、という話がしょっぱなから出てくる。そういった虚構を、民族にかぎらず人はもちながら生きている。それを自覚して生きよう!というような主張を受け取った。でもたしかに、小さい単位からいけば、人は信じたいものを信じるよな、という気持ちにもなる。社会や民族になってくると、もうそういうふうだから「そうだよね」と思っているけれど、果たして本当にそうだろうか?ということに立ち会う機会はそうない。

民族とは全然関係ないのだが、アイドルの話をしていたときに、メンバーの入れ替わりが頻回なグループの場合に、そのアイドルの同一性はどのように担保されるんだろうね~、ファンはどういうところをもって応援しているんだろうね~という話題になり、ひとしきり話が終わってひとりで考えてみたとき、ファンーアイドル間でその虚構を共有しあうことで成立しているのかなと思った。(おそらく)そういったファンの心理を描いた漫画を、『闇金ウシジマくん』の作者・真鍋昌平が読み切り『アガペー』に描かれているのを思い出した。

話は本書に戻り……その考え方に通底する部分が少しでもあれば、本書で書かれるように、この世の中の概念や常識といったものは、ほとんど虚構といっても差し支えない。しかしながら、決してネガティブな意味合いでなく、そういった意味の成立やつながりを駆使していきながら生き延びていくほかない生き物が人間なのだなと思うと、これまで「なんで今どき宗教に帰依していく人がいるんだろう?」といった自分の疑問も、静かに氷解していった。ならびに、どんな虚構を信じて生きていくか選びとっていくリテラシーとでもいうのか、そういったスキルはもっていたいなと思った。

読んでくださり、ありがとうございます。正直タイトル買いだったのですが、出会えてよかったです。民族にかぎらず話は広がっていくが、通底しているのは、

読んでくださり、ありがとうございます。前向きに虚構をうけいれながら過ごしていったりものを考えていったりすると、自分と異なる考えや捉え方の人も、別の虚構のひと、という感じでやわらかく受け入れられるのかもしれませんな。

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