◆感想『九条の大罪』第74審「至高の検事」10

今週のお話

九条の事務所

前回の終盤で、京極とその舎弟たちが、息子・猛の遺体をデスクに出し、彼の死と、壬生の居場所を尋ねていた。その続きである。それに対し九条は、京極ほどの立場のある人間が軽率ではないかと、遺体の一部をしまってほしいことを伝える。書類に切断された足指が落ちるが、気に留める様子もなく、京極は壬生の居場所を問い詰める。九条は、依頼者同士のトラブルになるため介入できないこと、利益相反になること、もし無理強いするようであれば、事務所を出禁にすると、伏目がちにこたえる。京極の目線のさきにはペン、九条もそれを見ているのか、京極はペンを折り、防犯カメラの場所は全てわかっており、止めるよう命じる。手下たちは事務所に隠されたICレコーダーを見つけ出している。

監視するものがなくなった上で、京極は、九条が伏見組の守り神であり、「度が過ぎた親バカ行為をお詫び致します。」とかしこまり、猛の殺人を依頼した首謀者の制裁の写真をスマホで見せる。眼球は取り出され、鼻と耳も削がれている。まだ、生きているらしい。全て吐かせたというので、さらに2週間拷問して山に埋めるそうだ。急がないと犬飼たちは海外に逃げてしまう。子供を奪われた親の気持ちがわかるのであれば、壬生の居場所を知りたいという。九条は目をみはる。京極の本気は「そういうことなのだ」というのを、見せつけられているのである。

伏見組まわり

場面は変わり、組の事務所のようだ。雁金正美という若頭補佐、つまり京極の右腕にあたるのだろうか。彼が、若い男ふたりを責めている。彼らは2つ前のエピソードで、犬飼に猛の殺害を依頼した男を、尾けていた男たちと風貌が似ている。戻って、ふたりは、壬生と犬飼の殺人を海外のヒットマンに依頼しようと申し出た(であろう)ことに対して、いつでも組に身体を賭けられるという言動と一致しないことを、問いただされているようだ。

そこに、だいぶ世代の上の男が入ってくる。若い2人に対して、金儲けが得意な割に、いざというときに腰を引いてしまっていることを罵っているようだ。そこで、壬生と犬飼については自分に任せてほしいと名乗り出るのであった。「カジさん」と呼ばれたその男は、タダ飯食いの時代遅れだと裏でバカにされ続け、返り咲く機会をうかがっていたという。最後にひと花咲かせたいという。そんなカジさんこと鍛冶屋小鉄に、雁金は、壬生たちは半グレだが一般人なので、拳銃を使わないように指示する。とはいえ鍛冶屋は「ガキ相手にハジいたら恥をかく。」と、お守りとして、拳銃を忍ばせるのであった。

事務所から出た若いふたりは、猛に悪態をついている。中年シャブ中ヤクザならまだしも、壬生も手下も腕が立つ。さらに、組やカシラ(京極や雁金あたりかな)のためならまだしも、猛のために仇は取りりたくないという。にしても、このコマ「まだしも」多いな。こんなに若い人が「まだしも」言うかな。猛には散々アゴで使われたと黒髪、死んでくれて内心全面的にガッツポーズと金髪。感情的な部分のみならず、反社会性力に極めて近い人間に関わる犯罪ということで、警察も警戒するので動けない、と状況判断についても冷静だ。

そこに、トラックがやってきて、「乗れ」と急に声をかけてくる男がいる。名は艮(うしとら)克茂、破門絶縁された元ヤクザと紹介がある。戸惑う若いふたりに対し、艮は、今から壬生の自動車工場に突っ込むのだという。ふたりは、勝手にやったらまずいとか、若頭補佐に叱られるとか、正論で止める。艮は気にする様子なく、波紋絶縁になっても兄弟分のためならいつでも身体を賭ける!とやる気満々だ。一応、雁金に電話をするも、京極を慕っている気持ちはわかったが、今は時代が違うので、勝手に動かないよう指示をする。電話帳の登録は「若頭補佐 雁金ホサ」だ。下の名前じゃあないのは、そう呼んでいたからなのだろうか。「ああ、わかった。」と電話を終え、走り出す雁金。どうやら話は通じていなさそうである。抗争全盛期を経験している元武闘派ヤクザと自分たちの熱量の違いや、覚醒剤でヨレている(検索したところ、幻聴や妄想、挙動不審などといったダウナーな状態だそうだ)ことなどをこぼして見送る。そして、ものすごい勢いで壬生自動車工場へ突っ込み、気味悪く笑うのであった。

壬生と久我

情報はすぐ伝わったようで、自動車工場につっこんだ話が壬生たちの耳に入る。伏見組の仕業なのか、今後の動きがどうなるのかと、久我はその先のことを気にかけている。壬生は冷静に、伏見組の情報量は半端ではなく、犬飼たちはすぐ見つかること、そこから、壬生たちのグループ「天明會」ごと拉致され、犬飼たち実行犯は2週間の拷問ののち山に埋められる。そして、他のメンバーは伏見組の準構成員として吸収される……すなわち、実質伏見組に取って代わられるということである。「壬生くんと俺もタダじゃすまないですよね?」と当然の問いを投げかける久我に対し、おもちのネックレスの描写が入る。そう、壬生は京極に対し、おもちの恨みがある。壬生は「どうせ殺されるなら京極たちをぶっ殺すか?」と、覚悟の要る可能性を見出すのであった。

感想

さて、おもしろくなってきた。伏見組の中でも、猛にたいする印象はいろいろのようだ。しかし「親バカ」なる京極が動いたことによって、だいぶ事は大きくなってきている。

ここで大きな転換点になるのは、艮の存在だ。彼は時代が変わっているにもかかわらず、特攻を「実行して」しまった。破門絶縁されているということで組を直接問いただすことにつながるのかどうかはわからないが、嵐山たちであれば、伏見組へ推理の糸をつなげ、芋づる式に犯罪者たちを引き上げることだろう。また、それに対する組の対応も気になるところだ。

エピソードの名前である「至高の検事」は、今回の事件において、どこからどこまでのところを担当するのだろう。猛の殺人のみならず、自動車工場へのダンプ突っ込み、首謀者の殺害、さらに、犬飼たちが見つかればその拷問と殺害、と、挙げていくと凄惨なことこの上ない。ゆるっと待ちたい。

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