◆特別でないということ【サガシリーズ考察】

 きのう「サガ」シリーズは複数主人公ものが多いと書いた。これは制作者である河津秋敏氏が、世界観の描写にあたり意図的に行っていることだ。

 主人公となるキャラクターは凡人も、そうでない人もいる。「サガスカ」でも主人公となる4人は名家の娘、魔女(「サガスカ」世界で魔女はふつうに存在する)、荒くれ者、処刑人だ。「勇者の血を引く少年」とか「特別な力をもった少女」といった、いわゆる「特別な存在」が主人公となるケースは少ない。サガフロ2はそういった意味でも異色だ。

 誰が主人公であっても、その世界にいるさまざまな人間のうちのひとり、というドライな描かれ方をしている。1人めを攻略しているときはあまり意識できないものだが、2人め以降を攻略していると「こういった立場のキャラクターだからこういう世界の見方をしているのか」というのがよく伝わってくる。従来のひとり主人公もののような「主人公たちが正しい」という感じがあんまりしない。

 仲間にも「この人でないと」という特別性はほぼない。現に、彼らがいなくても物語はすすむ。空飛ぶことを夢見てグライダーを作る青年だったり、諜報活動に励む田舎町の女性だったり、森の奥に住む魔女だったり、いろいろだ。

 この、多角的に世界をとらえる仕掛けが「サガ」のおもしろいところだ。単純に善と悪があって退治するのではないし、主人公同士で利害が一致しないときもある。同じイベントをやっても、主人公によって見え方はちがう。これもまた、現実世界でわれわれが営んでいる人生、ひいては世界とおなじ立ち位置にいるような気がしてならない。ゲームなのに、どこかリアルと通底する視点をもっている。遊んでいる最中にこんなことは考えないけれど、電源を落としてみてふと考えてみると、頭に浮かぶのである。

 今日も読んでくださり、ありがとうございます。じぶんの創作ではこれを目指しているんですが、まだまだ勉強が足りません。河津さんの器がでかでかなことがよくわかります。すごい人です。

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