◆全消しのよろこび

以前、食材選びはパズルのピース集めと似ているということを書いた。となると、自炊はパズルを解くのにあたる。自分で組んだパズルを、自分で解いていく。自炊には献立づくりや食べる楽しみももちろんあるけれど、何よりこのパズル要素がおもしろくてならない。

ところで、パズルゲームには「全消し」ということばがある。画面に表示されているパズルをうまく組み合わせ、連鎖を利用して画面をまっさらにする上級テクニックである。今はソーシャルゲームの普及によってパズルが昔よりポピュラーになったため、ご存知の方も多いだろう。

わたしは一週間単位で食材を買い込むので、この「全消し」に毎週チャレンジしている。買った食材を使ってできるだけ異なった料理をつくり、きちんと使い切れたら「全消し」成功だ。

だが残念なことに、多くは失敗に終わる。いつも少しだけ、食材が余る。心配性でひとつ余計に買ってしまうせいか、いざ作る段階になってめんどうくさくなり、一品減らしてしまう怠惰さのせいかは知れないが、わたしの画面にはいつも、底の方にピースが残っている。じぶんの実力をわきまえずにピースを組み、実力より上の盤面を組んでしまっているのだ。この見通しの立てられなさは、素人丸出しである。RPG的にいえば初期レベル初期装備のまま、ボスに挑むようなものだ。

ところが先週、たまたま全ての食材を使い切ることができた。冷蔵庫の中には米と調味料と、体調不良時の経口補水液だけ。野菜室はもちろん空、おまけに作り置きもしっかり消費されている。食材も金銭も無駄にせず、すべておいしくいただくことができた。この喜びといったら!「全消し」の爽快感が、わたしの全身をかけめぐった。

目指すはとうぜん「毎週全消し」だが、まだその境地には至れそうにない。心配性と怠惰、どちらをなおすかは悩ましい。なんにせよ、試行錯誤の日々はまだまだ続く……。

今日も読んでくださり、ありがとうございます。「全消しの爽快感」とか書きましたけれどわたしはパズルゲームがめっきりでして、じょうずな知り合いが遊んでいるのを見てうしろから追体験しているだけです。本当にヘタクソなのです。

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