◆万年筆のこと

ふだんづかいの手帳の買い替えを検討しているうちに、万年筆もほしくなってきた。万年筆生活もそろそろ2年半をむかえる。筆記時の軽さや文字の風情、最近ではメンテナンスの手間すらいとおしくなってきている。 今はドイツのLAMY社のものを使っているのだけれど、前にも書いたように縦書きがしにくいのと、漢字が書きづらい気がする。

そこで、どれを買うかという問題にさしあたる。ノートと同じく国産のものを応援したい。縦書きをなめらかに行いたいので、そういう意味でも西欧のものでないほうがいい気がする。Twitterでつぶやいてみると「中屋万年筆」という「プラチナ万年筆」で職人をしておられた方が営んでいる万年筆屋を紹介してもらった。ちょうどその週末に銀座伊東屋で実演販売があるというので、行くことにした。

始まる前に予約をするらしい。11時始まりなのを知らず、10時半に来てしまった。わたしは二番目だった。「今日は買わないで、今後の検討材料にしたいのですがよいですか。」と聞くと、係員の女性の方は笑顔で了承してくれた。銀座はめったに行かないところなので、こういう応対をしていただけるだけでほっとする。郊外から出ないわたしからすると銀座はハイソで、自分と不釣り合いなイメージがある。

他のフロアを見ているとすぐ順番がきた。職人の方は小柄で、背中が少しまがっていた。異なるペン先を何本か試す。滑りや書き心地のよさが今までの筆記具たちを凌駕していた。漆の風合いもいい。前にも書いたが漆がすきだ。「ここのものがいい」と思った。選ぶときの秘訣を聞いてみると「かっこいいと思ったものを選ぶといいですよ。やっぱり自分がいいなと思ったやつは、大切にするし長く使います。」と言われた。インターネットで調べているときには出てこなかった答えだった。ここでも「かっこいい」は基準になるのだと、どこかうれしいきもちがわいた。

ほしい色や形がだいたい決まったので、礼を伝えて席を立つ。同じフロアに陳列されていた蒔絵のついた万年筆をひととおり見て、美術館を出てくるようなきもちで店を後にした。

今日も読んでくださり、ありがとうございます。スイッチをふたつ買える値段なので、万年筆とスイッチどっちを先に買おうかが今のなやみです。

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