◆ぼうしとわたし

顔の造形はあきれるほど残念だが、あたまの形はとびきりきれいだという。頭蓋骨をきれいに組成してくれた両親の遺伝子にはあたまが上がらない。

小さい頃から「ぼうしが似合うね」と言われてきた。おとなになってからもぼうしをかぶっているひとを見るとくぎづけになった。キャップにハットにキャスケット、どれもすてきだ。そのくせ自分がぼうしをかぶることは、これまであまりなかった。

じぶんで服装をえらぶようになってから──おそらく大学生くらいだろう、ショートボブで過ごすことが多かった。ボブといえばふんわりとしたシルエットの愛らしさが魅力である。しかしぼうしをかぶることで、ふんわりとしたラインがいともたやすく死んでしまう。何度かぼうしを導入してみたが、どれもあまり長続きしなかった。今となっては、決してフェミニンな印象を与えたいわけでもないのに丸みのあるボブを続けていたことそれ自体が、よくわからない。

それが去年の春夏ごろからツーブロックに移行し、髪の毛を固めないかぎりはぼうしの制約を受けなくなった。引っ越して自転車通勤になったことも手伝い、日差し対策も兼ねて今年の春からぼうしを導入することに決めた。そのとき、だれもかぶらないぼうしたちが乱雑に置かれている実家の光景を思い出し、連絡して譲り受けた。ネイビー一色のキャスケットと全面花柄のキャップ、そして麦わらぼうし。花柄のキャップはさいしょ受け取るか悩んだが、ここ数年すっかりパンツスタイルで過ごしており、マニッシュな格好のアクセントになると思い取り入れることにした。

「ぼうしは屋内で脱いでおくものだ」というマナーのおかげで、ツーブロックの出番をきちんととっておけるのもいい。主役に席をゆずるように、そっと舞台の裏手へ消えていく奥ゆかしさがいとしい。 もちろん登場する花形はショートボブほどくずれない。最高だ。

紫外線は年中放出されているというし、冬も防寒を兼ねられそうなので、今後はできる限りぼうしといっしょに過ごそうと思っている。

今日も読んでくださり、ありがとうございます。両手が自由なのもぼうしのよさですね。

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