◆健康な側面

 病気や障害というとどうしても治癒や対処の仕方に目がいきがちで、たしかにとても大切なことなのだが、それと同じくらい健康な側面をみるということも大切なのではないかというのを、最近切に感じている。

 医療のフィールドである「病院」に対して生活のフィールドである「地域」は、基本的に健康モデルを前提としたコミュニティである。

 ここまで「健康」という文字を何度も打ってきたが、ここでの健康の定義はWHOの提唱する、
「健康とは、病気でないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが良好な状態にあること」
である。要は病気や障害があるから不健康だ、というのではなく、それらを背負っていても「良好な状態」すなわちポジティブな状態に目を向けている。いいかえれば、これは充実した日々を送れているかどうかを重視する考え方ともいえる。QOLという言葉はすっかり馴染みのあることばとなっているが、それに近いところもある。ここにおける健康は幸福とも密接なため、利用者の幸福がいったいなんであるかということにも目を向けておく必要があるだろう。
 また、ここでの「良好な」は原語だとwellbeingであり、日本語に訳すのが難しいことばなのだが(よく「幸福」とか訳されることが多い)、心理学者のリフは心理学的wellbeingを以下の6点の要素として整理している。

  • ●自己受容:自分に対してポジティブな態度を持つこと
  • ●他者とのポジティブな関係:他者とあたたかく満足できる信頼できる関係を持つこと
  • ●自律性:自己決定ができて自立していること
  • ●環境制御力:自分の周囲や環境に対応する能力と達成感があること
  • ●人生における目的:人生の目標と方向性が持てている感覚があること
  • ●人格的成長:成長し続けている感覚があること

 これをふまえると、人が地域で生活していくのに、健康な側面を知らないことには、うまく順応していくことがむずかしいであろう、というのは、どうやらそれらしく思える。支援者は利用者の地域生活を円滑にしていく役割を担うので、どうしてもできていないところや、課題を挙げてしまいがちだが、併せて、いかに健康な側面を見つけ出せるか、もしくは関わりの中で引き出すことができるかが、おそらく支援における技術のひとつになるのだろう。

 読んでくださり、ありがとうございます。自分におきかえてみてもけっこう見つけるのがむずかしかったりいたします。

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