◆感想『九条の大罪』第80審「至高の検事」16

今週のお話

九条の日々

前半は、九条の職務の日々が描かれる。弁護のお礼に、丸亀製麺をドヤ顔でご馳走しようとする薬物初犯の男性、ホストの売掛金について相談する女性、痴漢容疑で逮捕されたものの、月曜に出られるかを気にしている男性、覚醒剤所持で逮捕された、ややテンションの不安定な女性など、さまざまな依頼人が登場する。「貴賤を判断しない」というのが、まさにでている。どの依頼人に対しても、九条は依頼人にとっての最善を尽くしているようだ。

ブラックサンダーと九条

住まいとしている屋上の物置のなかに、ブラックサンダーはいる。最初は吠えてしかたなかったが、今はすっかり落ち着いている。九条としても、ブラックサンダーのいる生活になじんでいるようだ。キャンプ飯をしながら、九条はブラックサンダーに語りかける。今の生活をやめようかと思っているのだという。テントは寒いし借りている物置もカビ臭いと、スマホに1LDKの間取りをうつしながら語りかける。そこは大型犬を飼ってもよいのだという。ジャックダニエルをあおり、カビ臭い物置で、ブラックサンダーと一緒に眠るのだ。

嵐山、来たり

翌朝、屋上に警察がやってくる。やってきて早々、嵐山は逮捕状を九条にみせる。冷静に罪状を尋ねる九条。「犯人隠避だ。」として、犬飼への逃亡の指示を、壬生が語ったのだという。それを聞いた九条は「上等じゃないですか。」と不敵な笑みを浮かべるのだった。

感想

逮捕されるとなると、そのあとは事件として立件され、裁判になるのが濃厚だろう。立件されるそのときこそ、検事の出番、すなわちそれが兄・蔵人になるのが漫画的にはありえそうなところだが……である。

逮捕状が出ているということは、証拠とおぼしきもの(これは、壬生の証言から導かれるのだろうか)があり、その上で裁判所が許可をして、嵐山が九条にたどりついている、ということのあらわれである。日本は罪刑法定主義をとっているので、刑事事件において「なんかあやしいので逮捕します」というのはできないことになっている。これまで、嵐山は「なんかこいつあやしいな」というところにとどまっていたのが、壬生の証言をきっかけに逮捕に踏み切ったわけである。

だが、事実としては、犬飼の逃亡について、九条はコメントしていなかった。ので、これはでっちあげといえば、そうなる。どうしてそのようなことをしたのか、というところについては、これまでうまく立ち回ってきた壬生が急に裏切る展開は、今後のことを考えても自身を有利になしていくとは考えづらく、何かしら意図があるのが予想される。さいごの九条の不敵な笑みも、気になるところだ。

仲間を売る(じっさい、このとき売られたのは壬生じしんなのだが)ことで割をくった経験を、壬生は愛犬おもちを通して痛感している。そして、それを自身の背中に彫ってもいる。今回はブラックサンダーがおり、まぁ、警察に殺されることはないだろうが、愛犬おもちの件を再度読者に想起させる。ブラックサンダーがおもちのようになることは考えがたいが、京極にしてやられた、壬生にとっては屈辱的な思い出のシーンと、状況が、なんだか少しだけ重なってしまうな。

さて、実際、3,4つ前の話で九条は「独り言」として壬生の立ち回りについて助言している。ここで気になるのは、そのとき、犬飼とは委任契約のサインをしていないことだ。京極との利益相反となるため、と説明までしている。逮捕後、嵐山による取り調べがおこることは避けられないだろうが、そういったところのやりとりについても、今後しっかりとみていきたい。

来週も掲載予定なので、たのしみ〜。

コメント

  1. よしき より:

    いきなりのコメント失礼いたします。

    壬生が九条をうたったのは、九条を京極から守り、かつ京極を陥れるためなのではないでしょうか?

    まず、壬生が九条をうたうメリット・デメリットを考えてみると、九条を謳うことで多少の刑の減免はあるのかもしれませんが、一方で今回の自首の弁護を九条に任せられなくなります。そのため壬生にはほとんどメリットはないように思えます。

    またそもそもの話ですが、犬飼に海外逃亡を促したのは壬生であって九条ではありません。そのため、今回の件では犯人隠避の罪状では逮捕のしようがないはずです。

    ではなぜ壬生が九条をうたったのかというと、一つが九条を京極達から守るためなのではないのでしょうか?
    今回壬生が京極の件銃所持を証明し、九条が壬生側につくなると、京極達を貶める片棒を九条が担ぐこととなり、今後壬生だけでなく九条も京極や伏見組から追われることとなるのではないでしょうか?
    それを防ぐために壬生が九条をうたえば、九条は壬生との利益相反から壬生を弁護することができなくなってしまう。それにより今後京極や伏見組から狙われることを防ぐ目的があるのではないでしょうか?

    また、九条が20日間の拘留中に京極の逮捕もうまく行うことができれば、九条は京極の弁護を行うことができないはずです。これが壬生の二つ目の目的ではないでしょうか?

    以上から、壬生が九条をうたったのは、九条を守りつつ京極達を貶めるためなのではないのでしょうか?
    また、九条ではなく壬生が行ったはずの犬飼への逃亡教唆を九条に擦り付けたのは、本当に九条のことをうたったわけではないのだという、壬生からのメッセージなのではないのでしょうか?

    • いぎょ カヤルア より:

      こんばんは、
      コメントありがとうございます。

      確かに、壬生自身は懲役を免れないところにいるとは思うので、そう考えると、九条を守るためというのは、これまでの2人の経過をみていても頷けます。
      20日の拘留〜のところは、たらればのところもありますが、壬生の持参した拳銃の存在もありますし、まもなく伏見組に警察が迫ることも現実的な線になりますね。
      ただ、ここでまた何か起こるのが真鍋作品という気がしないでもなく……何にせよ、来週も楽しみです。

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