◆感想『九条の大罪』第81審「至高の検事」17

今週のお話

事件

壬生の自首から、あれよあれよと伏見組に警察の手が回り、ネットニュースになっている。京極は逮捕されるも、「まったく知らない」としらをきっているようだ。

そのニュースを見ているのは苦情の師である流木と、烏丸だ。長期実刑になる可能性が頭をよぎる流木だが、話は変わり、壬生の接見に、烏丸を連れていく。烏丸は、壬生が九条を選任していないことに驚いている様子だ。流木は、壬生と九条の関係について知ってか知らぬか、それとも選任を受けているゆえの接見だからか、さほど意外な様子はみせず、落ち着いている。

壬生との接見

さっそく、壬生との接見に赴く。どうやら、自首したことから、警察と取引をして、不起訴になる可能性もあるようだ。壬生はさっそく、ノートをアクリル板に向けて開き、書いた内容を写真に撮って、九条に伝えてほしいと流木に頼む。烏丸は即座に断り、弁護士バッジが飛ぶこと、正規のルートで手紙を書くよう促す。対して壬生は、接見禁止がついた人間の手紙は検閲が入り、九条に届かないと反論する。

その様子を見て、流木は、接見禁止をつけられている人のコミュニケーションを取る権利が、日本の司法制度によると阻害されている、ということを、カルロス・ゴーンが奥さんと面会できず、逃亡を決意した原因であり、そういった制度は世界的にみても極めて野蛮なのだと、自信の考えを話す。そうしてスマホを取り出し、

「外部交通は大事なのです。人質司法の根幹部分です。手紙の撮影は、刑事弁護人として生きていくための踏み絵みたいなもんです。」

そう言って、壬生の開いたノートを撮影するのだった。

烏丸と九条、ふたたび

その様子をみて、なにか気に入らない様子の烏丸。警察署を出て、歩き出す烏丸に、流木は声をかけるが、タバコを吸ってくると、離れていく。まもなく着信があり、相手は嵐山。内容は、九条が烏丸を弁護士として選任要求したという内容だ。罪状は京極の息子の殺害実行犯の犬飼に、逃亡を示唆した県議があり、犯人隠避で逮捕したのだという。

カートリッジにタバコをつめながら、烏丸は流木に連絡をする。九条の逮捕については、流木も知らなかったようだ(立件されていないだろうし、それもそうか)。壬生の供述によって九条が逮捕されているため、それぞれを弁護するふたりが利益相反になる可能性について、流木は返す。続けて、弁護士の刑事事件における実刑は業務停止どころか、弁護士会は除名もしくは退会になってしまう、死刑宣告だという。刑の執行から10年経過して、弁護士の権利は復活するが、今の時代、弁護士会は登録を認めないだろうと、流木はつづける。

「禁煙」と書かれた広場でたばこをつまみながら、烏丸は話を聞いている。そして、烏丸は九条の接見に向かった。九条はのんきなもので「ガラス越しの弁護士はこう見えてたのですね、」とこぼす。どう見えるのかという問いに対して「藁です。」と一言。俯きがちに烏丸は「縋れないですよ。」とこたえるのだった……。

感想

展開していくなあ。この小気味よいペースが、週刊連載で追う良さだなと思う。

さて、一番気になるのは、やはり最後だろう。そもそも烏丸は、反社会の人間を弁護する九条をみて、その身を案じ、彼の元を離れていた。それが、半グレの壬生の供述で逮捕され、烏丸を弁護士として選任する、という状況は、烏丸にとって、予測しうる可能性のひとつだったろう。壬生の供述については前記事でコメントをいただき、「京極を弁護させないために九条を守ったのではないか」とする考えをみて、「たしかに!」と思い、そうであれば、そこまで烏丸が汲み取れるのかどうか、というところは、ひとつ気になるところ。壬生のノートの内容も、同じく気になるところである。

烏丸はノートを撮影することについて、正規の手法で手紙を書くよう促した。一方で、流木は「刑事弁護人として生きていくための踏み絵」と称して、躊躇なく撮影する。流木は人権派の弁護士として描かれるが、その目的のための手段は案外選ばない大胆さがみられた。これも流木なりの「正義」の表し方なのだと思うが、烏丸は少しひっかかるようだ。これは九条のしめした「正義」のありかたとは、また異なっており、そもそもエリート弁護士法人にいた烏丸からみて、各人がどう映るかは、また興味深いところだ。

ところで、九条がフラットに流木と山城とつきあっていることを考えると、烏丸にそういったフラットさはあまり見られない。そぼくに気になったところでは「気になる」という顔をするし、気に入らない人には別れたあとで、九条にちょっとこぼしたりもする。本作の中で、比較的、一般の読者に近いのは烏丸の感性じゃあないかな、と思っていて、このあとの展開としても、あまり見るような案件ではないだろうし、一緒に見届けていけたらと思う。

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