◆失敗に笑う

 料理に仕事に人間関係、人生は、いろいろなところで失敗がある。生きていればとうぜんのことだ。わたしは失敗続きの人生を送っているくせにとにかく挫折に弱く、すぐ萎縮してしまう。無力感に苛まれ、何も手につかなくなる。そして調子が悪くなるまでがお決まりのパターンだった。

 いつものようにゲームをしにWGCに行ったときのことだ。平日の昼間で人は少ない。個人でゲームセンターを運営することについて聞いてみたいと思い、店長と小一時間話をした。始めたきっかけや昔と今の思い出話など、いろいろなことを話してくださったのだが、なかでも一番印象に残っているのが失敗についての話だ。

 店長はいつもニコニコしていて感じがいいのだが、なんと失敗してもニコニコしているという。失敗は次に活かすための勉強になるので、むしろうれしいのだという。失敗は成長の種だと。「失敗して何が悪いの?とおもいますね。」と。聞いてみると、小さい頃からそうだったらしい。萎縮してきた今までの人生が、なんだか情けなくなった。見習わねばならない、と思った。店長は「まだ若いんだし、たくさん失敗できますよ。」と言った。もちろん、ニコニコしていた。

 それ以来、何か失敗があったときは店長の言葉を思い出すようにしている。いきなり失敗に直面してニコニコすることはできない。しかし「次に活かす」というのを考え始めると、萎縮してからリカバリーするまでの期間が短くなった気がする。今の失敗から何を学べるか、なぜ起きたのか、同じことが起きないためにどうしたらいいのか。これはとても汎用性が高く、ゲームから人間関係まで有効であった。その話を聞いたあとはたまたま各方面で失敗が続き、実践できる「ラッキーな」週だったのだ。

 いつまでも失敗を引きずってしまうことに気を取られていたが、大事なのはその先だった。ただのゲームセンターのはずなのに、生きていくヒントがことばのなかから見つかる。珍しいゲームが置いてあることが魅力として語られることが多いWGCだが、店長の人となりも少なからず寄与しているんじゃあないかと思う今日このごろである。

 今日も読んでくださり、ありがとうございます。記憶から絵を描くのが苦手なんですが、こういう印象です。

コメント

  1. […]  今年の夏に「失敗に笑う」という記事を書いた。WGCに通い始めたころ、店長の話す「失敗」に感銘を受けたときの話だ。ここで大きくわたしの失敗観(というのかな)は刷新され、だ […]

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