◆手本を絞る

仕事柄、人にものごとのやりかたを伝えたり、行動に対するフィードバックを返す機会が多い。それも、幅広い年代のひとが相手だ。アラサーの若造にあれこれと言われるシチュエーションというのも相手にとってストレスフルだろうなぁと思いつつ「今のはこういうところが工夫されていてよかったと思います。」、「なぜこれを楽しいと感じましたか?」等、今後の相手にとって有益であろう(と思われる)ことをお返ししている。
説明もフィードバックも、やってみるとたいへんにむずかしい。入職後の研修はないので、先輩の観察をして真似ることが重要である。「学ぶ」の語源は「真似る」というが、これはほんとうである。さいわい先輩はたくさんいるので、仕事の傍らでいろいろな人を観察してみる。しだいに、人によって見るポイントや伝え方のばらつきがあることがわかってきた。そこで無知なる者は「どれがよいのか」という判断に困る。まず最初に、自分が真似るべき基準を持っていないことに気付くのだった。
そのことを先生(と勝手に呼んでいる方)に話すと「見本を一人に絞るといい」と言われた。一人に絞るというのは、かんたんなようで結構むずかしい。どうやって一人に絞るかを考えた結果、自分が教わったり、フィードバックをもらう立場になったときにわかりやすく・簡潔で・感じのいいやり方をしている人に決めて観察をはじめた。以降、うまくいっているかは未知数だが、少なくとも伝え方のブレは小さくなってきたと思う。
別の日、自分の文章について考えていた。いかんせん拙文書きは悩みが尽きない。書けない・わかりづらい・おもしろくないの三重苦である。先生の教えを採用することにし、文章に関しても手本をしぼることにした。しかし「こういうのを書きたい」という具体的なイメージが沸かず、昔読んで心に残っている作品を再読することにした。見本探しの段階である。
今日も読んでくださり、ありがとうございます。今読んでいる小説は川端康成の『眠れる美女』ですが、自分の書く作品のテイストと全然違っていて、果たして観察がうまくいくのかどうか……。エッセイはそもそも読書量がないので、人のおすすめを片っ端から読んでおります。おすすめがあればいつでもお待ちしています。

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