タイトルをみて「気になる」と思い買った本。劉慈欣の『三体』と同じく三部作だが、描写の仕方や物語の展開が全くことなっていた。唯一近いところといえば、世界観が壮大なところくらいである。
シンガーソングライターの副業の依頼でC市を訪れた楊偉は、ホテルのミネラルウォーターを飲んで激しい胃痛に襲われ、病院に運ばれる……。そこから病院や治療をめぐる物語が繰り広げられていく。
話はたしかに進んでいき、場面も刻々とかわっていくのだが、読み進めるうちにこれが現実なのか?人物の幻想や追憶、集団幻覚なのか?と思わなくもないシーンが現れては消えていく。この、波のように繰り返す現実/非現実のゆらめきのリズムが心地よく、だんだん「どっちでもいいのかもしれない」という、読者をも作品の世界のもつ危うさや不気味さの中に組み込まれていくような感覚があった。当然、そんなわけはないのだが、とにかくずっと足場のぐらぐら揺れるところを歩き続けていて、その途中で見えるものに興味をひかれ、走り続けていたら元々きたところが見えないし、土地の形も変わって戻れないし、という読後感であった。
解説に登場人物の名前の補足等も描かれ、不穏さや不気味さ、それでいて時折官能的な雰囲気すら流れてくる描写の正体が垣間見える。中国語のもつニュアンスを母国語話者でない者にも分け与えていただきありがたい。
ちなみに、最後まで読んでもおはなし自体は完結せず、不穏な空気を漂わせて読者をおいていく。読み終えたのが4/24で、この作品でないと味わえない混沌の続きに辿り着きたく、続きがいつ出るのか調べたところ、日本語版は5/1に第二部『悪夢航路』が出るらしい。まさにそんな状況で第一部がおわっているので、発売日に買いたい。本を発売日に買いたいなど、今までなかった。その難解さもさることながら、ぐっと惹かれる作品だった。
読んでくださり、ありがとうございます。読書の時間をコンスタントにとれているのは自分のペースというほかなく、うれしいものです。

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