◆石川に恋をする

物産展がすきだ。京都や北海道のような集客性が高くごみごみとしたものより、東北とか北陸とか四国とか、このように言うのはたいへんしのびないのだけれど、人の入りが多すぎず、ゆっくりと回れるものがよい。

だいいち、物産展でわかるのはその土地の代名詞くらいのものだ。いまさら、京都や北海道のそれを知ろうという気にはならない。京都は大学のころに半年ペースで行っていたし、北海道は今でも隔年で行っている。つまり、現地に赴いて「生のもの」を見る機会に恵まれているのだ。

しかし後者はそうもいかない。東北はアトリエ関係のつながりで時々行くようになったものの、北陸・四国はほとんど縁がない。縁薄い土地の物産展を見て魅力を概観できるのが、擬似的な旅行のようでたのしい。さらにきっかけがあれば「行ってみよう」と思うし、目的があれば行動も早い。

今週末はたまたま加賀百万石、ようするに石川の物産展だった。金箔グルメや海産物はもちろん、工芸品のコーナーも非常に充実していた。さすが「工芸の町」である。漆器ずきなわたしは、輪島塗のブースに惚れ惚れしてしまった。ひかえめな艶、羽のような軽さ、そして納得のお値段。生活に余裕ができたら輪島塗でそろえてみたい。しがない生活者のあこがれである。

そういえば、東京近代美術館工芸館が2020年に金沢での開館をめざしているという。それが落ち着いたころに旅をするなんてすてきだ。輪島には輪島塗のほかにも「デビルマン」の生みの親である永井豪の記念館がある。金沢と輪島はだいぶ離れているけれど、長い休みを取ればよかろう。いつか行きたい。風情のある町を自分の足で歩いてみたい。なんでもない道も見つけてみたい。そして日本海の幸をいただいて、波の鼓動にあわせて眠りにいざなわれる……。

ひとしきり想像を巡らせたところで、乾燥小えびと加賀棒茶、そして土産物の五指に入る、松葉屋の「月よみ山路」を買って帰った。長居はしなかったけれどすてきな時間だった。

今日も読んでくださり、ありがとうございます。ほかの面々は新潟の笹団子、三重の赤福、京都の阿闍梨餅、福岡の通りもんでしょうか。あんこばかり!

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