『純粋な人間たち』(モハメド・ムブガル=サール著、平野暁人訳)

書店で海外文学を見ているときに、ふと気になって手に取った一冊。装丁がすてきだったのがひとつ、セネガルの小説だというのがひとつ。セネガルはイスラム教信者が過半数を占める国であり、アラビア書道に関心をもつようになってからより、イスラム世界を知りたいという気持ちが大きくなってきた。

本編は、セネガルの同性愛者にまつわるある事件がSNSで拡散されたことからはじまる。大学講師の主人公の当初の状況や心情が、物語がすすんでいくにつれて変化していく経過が緻密に書かれる。ひとつひとつのシーンの掘り込みの深さと緻密さゆえに、繊細な主人公の機微がうきあがり、最終的に普遍的なテーマへと昇華していたように思う。最初からセンセーショナルな展開で、ぐいぐい引き込まれる。国もテーマもは異なるが、クッツェーの『恥辱』を読んだときに近い高揚感というか、感動があった。

また、本書で特徴的なのは詩的かつ哲学的な描写である。著者はフランスの大学に留学していたというので、フランス文学というものがそもそもこういうものなのかもしれないが、フランス文学の造形が深くないのでわからない。ここ数年はずっとノンフィクションやSFを読んできたこともあり、こういった内面性を丁寧に描写するタイプの作品とは久しぶりに巡りあったように思うし、そもそも大学の時分は哲学を学んでいたこともあるのか、「こういう文学すきだな」と気づき直すきっかけになった。著者の他の作品や、近しい作品などがあればさぐってみたいと思う。

読んでくださり、ありがとうございます。縁遠い国の文学を母語で読めるのはアチェべ(ナイジェリア)のときにも思いましたがとてもありがたいです。

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