◆感想『九条の大罪』第42審「事件の真相」②

今週のお話

高級ホテルのベッドで京極がくつろいでいる。サイドテーブル(というのかな?)にグラスを置く。どうやらしずくの所属していたAV会社の社長であるトゥールビヨンの社長(小林だったかな?)の名義で予約し、ホテル住まいをしているようだ。暴力団は記入の必要なホテルで宿泊できないからラブホ止まりだ、といったことを京極がぼやいている。もう一度グラスをテーブルに置く音を立て、京極は怪訝そうな表情で「例の頼まれた件」の話を始める。しずくが外畠の起訴により、300万でAVを降ろされたことの恨みは晴らさないと、と。てっきり外畠がデリヘルの女の子を強姦したことの制裁かと思っていたが、二人のやりとりから、しずくの件についての制裁の意味合いの方が大きいようだ(実行者の壬生はそのことを知らないのだろうか?)。外畠は局部を傷つけられ、人工管を入れるまでになったらしい。その写真も撮影してあるというので恐れ入る。小林は殺していないことを気にして、告げ口されることを恐れるが、「何?殺せってこと?」と京極は社長に凄み、慌てた社長に対し、グラスの音の真意を伝える。自らの至らなさを謝罪して動き出す小林だが、京極は絶対に社長までは辿り着かないという。そのあと、人気の女優を依頼するのだった。京極にあてがうのかと勘違いした社長は慌てて応対するが、今調子に乗っている妻子持ちの社長にあてがってスキャンダルを起こして恐喝し、最終的には会社を乗っ取るつもりだという。そのために九条を都合よく使える駒にしたいらしい。「山高ければ谷深し」と、京極のバックグラウンドも気になるところだ。

場面は外畠としずくの母(衣子)の家だ。しずくがいなくなっても、相変わらず雑然としている。いつまでも働かない外畠に痺れを切れしたようで、暴言を吐いた衣子を外畠は殴打する。グーパンチである。何発もお見舞いしたようで、その後、むしゃくしゃした勢いで高級そうな車に放火する。現場には防犯カメラがあり、しっかり証拠は残っていたらしく、即、取り調べの場面に。対面には嵐山がいる。車の持ち主は外畠の働いていたデリヘルのオーナーで、正直に話せべ放火のことは咎めないと嵐山は言う。嵐山はオーナーの久我が壬生の手下であること、警察が彼らを一斉逮捕しようとしていることを話し、寄り添うそぶりをみせ、情報を引き出そうとする。

そして、久我が留置所の面会室(この部屋の名前はなんというのだろう?)に座っている。壬生の依頼で来たという九条は、性風俗に就かせる目的で女性を職業紹介したという「職業安定法違反の容疑」で久我が逮捕されたと話す。しかし、当の久我は「外畠への暴行容疑」による別件逮捕だと返す。壬生の依頼と実情にはなんだかズレがある。そしてしずくのこれまでを傾聴してきた九条からすれば、外畠の名前にも聞き覚えはあるはずで……?

感想

たんに嵐山が反社会や半グレを追うようになるきっかけだけではなく、前章のエピソードの裏側もみられそうである。前回の、嵐山の娘の見たくもない側面や今回の京極の大写しから始まったあたり、嵐山の娘も裏社会の何かに巻き込まれていたとか、そういった側面があったのだろうか……とすら思ってしまう。反社会にかかわる人間に家族を殺されたというだけでもその憎悪は想像に難くないが、もし生前も関わりがあったのだとしたら、嵐山のような人物であれば、同じような思いをする人が今後生まれないような社会にしたいという正義感を強く抱くことだろう。

まず、小林の会社であるトゥールビヨンは京極の紹介で九条と繋がっているので、このやりとりは自然だ。京極が面倒ごとを解決する代わりに、小林名義のホテル暮らしや、AV女優の貸し付けを申し受けるというギブアンドテイクの関係だ。ただ、やはり今回のやりとりをみていると、イーブンな関係ではなく、京極が優位にある。たしかに、グラスの音に気づかず背を向けてやりとりを続ける鈍さでは、京極につけいられるのもわかる。そして京極はというと、九条を意のままに操れる弁護士として手懐けたいようである。いずれは京極に報復したいと考える壬生が、京極へ九条を紹介するのを躊躇っていたのも、わからないでもない。
また、外畠への制裁は壬生が実行犯だが、壬生は「店の女の子を強姦した」という理由で外畠を拉致していた。今回の話を見るとしずくという金の成る木を300万で潰されたことに対する小林社長の報復になるが、そこのあたりはどうも壬生まで話が通っていなさそうである。どちらも制裁の理由としては正しいが、真相の部分は今週語られたぶぶんなのだろう。

外畠は、局部を焼き切られても相変わらず反省がない。彼が弱者たるゆえんはこの学習能力の低さなのだろうが、内省することができないので同様のことを繰り返している。衣子を殴るときや放火するところまでは強気だが、後先を考えないので、逮捕された後は、亀岡のところに慰謝料請求をした時と同じく縮こまっている。ウシジマくんでもそうだったが、いかにも小物といったキャラクターの描写がまた巧い。嵐山のような警察陣営も、末端の人間からの情報を手がかりに深淵へと辿っていくのだろう。その入り口が今回は外畠だった、というところだろう。

最後の久我だが、彼は『家族の距離』編で菅原の介護施設にスパイとして送り込まれた壬生の舎弟であり、忠誠心もなかなかのものである。九条側には「職業安定法違反」ということで壬生は伝えたようだが、「外畠への暴行容疑」と久我は話しており、そこから考えると壬生を庇っているようにも読み取れる。以前のエピソードで「壬生さんのためなら体張ります」と言っていたことや、今回の京極の「(報復の犯人について)社長までは辿り着かない」と、久我の発言はうまく重なる。翌週はそこのやりとりについて詳しく掘り下げられるのだろうか。続きを待ちたい。

コメント

WP Twitter Auto Publish Powered By : XYZScripts.com