今週のお話
菅原、犬飼にたくさんの舎弟たちに囲まれた壬生(と久我)だが、壬生は久我と「生きてる?」「いえ死んでます。」と冗談を交わし合うほどの余裕だ。結果からいうと、ふたりは助かる。というのも、壬生は用意周到で、菅原や犬飼より一枚上手だったのだ。約束の3億はそこになく、その態度が気に食わないと金属バットを振り下ろす。介護施設を潰された恨みから、菅原は全財産を要求する。それに対して、逆に今の攻撃で壊れた時計を弁償しろとまでいうしまつだ。菅原は壬生の上にいる京極の名前を挙げるが、壬生は怯まない。舎弟たちを寝返らせ、たちまち菅原と犬飼にバットがクリーンヒットする。仲間割れでばたついているうちに、壬生は久我を救出する。顔もボコボコで、だいぶ痛そうだが、彼らのやりとりは「ドMだから大丈夫だろ。」「ドMじゃないから。」とのんびりしている。
一方、舎弟たちにボコボコにされた菅原は、とっとと殺せと腹を決めたようだ。壬生は殺すつもりはないといい、さきほどと同じく菅原をさん付けして、頭はキレるし商売上手だと評価する。それから、今のままでは自分も菅原も中途半端な街の輩、つまりは不良で終わってしまうと話しだす。より大きな影響力をもつために菅原の力が必要で、仲間になってほしいと。そこに犬飼が、舐めているのかとつっこみ、自分の人生を10年も奪ってよくそんなことが言えると悪態をつく。それに対し壬生は、「選んだのはお前だ、人殺し。」と制し、今の壬生は京極の命令で小山の自己保身のために金をかけているだけで、怒りの矛先を間違えないよう忠告する。要するに、壬生が愛美を殺すに至ったのも、小山、そして京極の存在がうしろにあるのだ。そして、自身が現在は京極の犬であることを認め、かつての犬飼と立場が変わらないことを伝える。そして、「首輪を外して」「カエしてやる。」と、報復の決意までも口にする。それを聞いた犬飼は、何か思うような表情でうつむくのだった。
場面は変わり、霞ヶ関駅の出口で、山城が烏丸が九条の事務所を辞めたことを尋ねる。ぐうぜんというよりは、「ご要件は何でしょう」と烏丸が言っているので、呼び出されたのだろうか。山城としては、九条が恐喝の共犯に問われている可能性があり、情報を集めているようだ。烏丸は少し警戒するような態度で、もし事実であれば、最悪の場合懲戒請求をされて、弁護士会を退会処分にされてしまうという。そして、それは弁護士にとっての死刑宣告でもあると……。
感想
前半はウシジマくんみたいな一話だったなぁ、なつかしいなぁ。壬生はやはり、京極への殺意を原動力にしている。そのために共通の敵を作って既存の敵対構造を崩すとは、よくある戦法ではあるものの、なかなか踏み切れない。手下たちを寝返らせた時点で、大丈夫だとふんだのだろう。京極の言っていた、半グレは上をすぐにうたった、ヤクザはそうではないという話は、ここでもまさに似たようなことが起きていたわけである。ただ、そのあたりも京極は見抜いていそうなので、固まってもそこからどうするのかなーというところと、犬飼の出所後に金庫強盗をしたエピソードがなにげに回収されないまま不自然に終わっているので、その辺のこともちょっと気になる。
また、壬生と菅原の対峙のシーンでは「犬」ということばが繰り返し使われるのも気になる。思い返すと、『九条の大罪』では序盤から犬が登場する。九条のブラックサンダー(元々は金本の飼い犬だが)もそうだし、壬生の愛犬おもちもそうだ。さらに、嵐山が半グレや反社を弁護する九条に「反社の犬」と尋ねたり、こきおろすシーンもある。壬生が意識的に犬というワードを使っているのか、そうでないのかは定かではないが、読者は意識的に「犬」というワードに気をつけながら読み進めていったほうがよいだろう。そもそも、犬飼など名前に犬がついており、愛美を殺したことの責任は自身の選択だと壬生に言われ、自身も京極の犬にすぎないということを話し、犬飼と立場を同じくしていることをさりげなく演出しているのも、壬生のうまいところだ。
少し話がそれるが、前のエピソードで、自身で選択することのできていないことを指摘された数馬も、遠回しに「富裕層の犬」になっていた、といえるのかもしれない。そして、そこからの脱却ができるのか否かというところは、本エピソードの肝であろう。
さて、壬生サイドのお話は、今回のエピソードを横断して続いていくことになりそうだ。そして、烏丸がふたたびこのタイミングで出てくるあたりも、九条を救う一助になるのだろうか。そういえば犬飼の弁護士は流木だったし、山城が出てきたということはそのうち登場もあるのか?
来週は祝日なので、再来週を楽しみにしよう。
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