ドラフト会議から数えて、およそ半年にわたるBEMANI PRO LEAGUEが閉幕した。終えてみると、いち観戦者として楽しんだ以上のことが心に残った。めったにない機会なので、今回は時系列にそって簡単にまとめておく。
BPLを見るきっかけ
しょうじき、最初は全く関心がなく「やるのか〜」という印象だった。DP部門がないことは昨今の事情からあきらかであったし、そもそもここ2年はbeatmaniaをほとんどやっておらず、スタートアップで入った会社が当然のように忙しく、それに加えて新型コロナが押し寄せ、ゲームセンターどころではなかった。去年のBPL ZEROも「なんか、やってるぽいらしい」くらいの印象であった。そもそも、TwitterのフォローにDPerが多く、情報そのものがコンスタントに流れてきていないことも大きい。
しかし、4月にフォロワーのU76NER氏が書いたnote「地方公務員がプロゲーマーになった話」を読んだ。U76NER氏とお会いしたのは一度だけで、だいぶ前のことになるし、何の話をしたのか正直覚えていないのだが、タイムラインのリザルトや日々のつぶやきから、ストイックにゲームを楽しんでいる方、という印象をもっていた。また、叙情シミュレータ等のツールを制作する様子をyoutubeで配信するといった、技術者としての一面も兼ね備えている。今回は、その一部をここで引用させていただく。(註:引用については、ご本人の許可を得た。ありがとうございます。)
(前略)私のようないちゲーマーを信じて、決して安くはない報酬を支払っていただけるという事実は、必ずこれに応えなければいけないと思いを強くさせるものです。
それがトッププレーヤーの方のプレーであれば、報酬に見合うだけの価値があると私は信じていますが、私のような実力もトップに及ばなければ実績もない無名のプレーヤーでは、試合をやって勝った負けたとしているだけでは全く釣り合わないものです。ですから、例えばこの記事のような情報発信をするのは私にとって必要なことですし、これをBEMANIやゲームセンターに縁がない方にも届けていかなければならないということです。これが私のBPL選手としての責任であると考えています。
プロゲーマーは、ともすれば「ゲームをやっていればお金がもらえる」と思われがちですが、そうではなく「ゲームを通じて報酬に見合う価値を生み出せる存在」のはずです。BPL選手としての責任を果たしていく中で、そのことを示していくつもりです。
地方公務員がプロゲーマーになった話
これを読んで、「ここまで真摯にゲームと向き合い、今後のアミューズメント業界の未来を牽引するというミッションを見出して応募した選手が出場するなら、見てみようかな。」という気持ちになった。
見るきっかけはこの一点のみで、応援するチームも自ずとレジャーランドである。たまたま知り合いのダイナソー氏も同チームということで、なんとなく親近感が増す。その後、youtubeにアップされていた各チームの選手紹介を見て「このゲーム楽しいなって思ってもらえるようなプレーをしたい」と話していたUCCHIE選手が気になった。他に知っていたのは、長らくポップンミュージックのランカーであるPEACE氏、NIKE氏、U76NER氏の言及していたNORI氏(友人の友人ということで名前はむかしから存じ上げていた)、そして誰もが知るU*TAKA氏とDOLCE.氏、そしてMIKAMO氏、以上の8名である。その後にドラフト会議を見て、それぞれの選ばれた経緯を知る。
観戦を通した変化
たしかファーストステージの最初の試合はうっかり見逃して、その後から見始めた。Twitterのタイムラインを見ると、BPL2021は周りのフォロワーの多くがリアルタイムで観戦していた。タイムラインがBPL一色になるお祭り感が楽しく、人と分断された新しい生活様式の中で同じものを共有して言葉を交わせる(Twitterなのでやや一方通行になってしまう感はあるものの)ことがうれしく、すぐに毎週土曜日がハレの日に変わった(翌日出勤なのが本当につらかった)。
肝心の試合内容であるが、これは多くの観戦者、そして選手自身が多く語っているので、私からあたらしく語ることはない。チーム戦という形式は、ふだん一対一で自身の精度を競うことが多い音ゲーにおいて非常に新鮮なシステムであった。ひとりが突出してうまくても勝てないというのは、セカンドステージのスーパーノバ対アピナ戦や、セミファイナル以降のラウンドワンを見ても明らかだ。ジャンルによって変わる選手の采配や選曲、コスト管理やストラテジーカードの使用タイミングなど、考えることは多い。特にレジャーランド、ゲームパニックは指名順と得意な分野のバランスがよく、選出は悩んだことと思う。監督やアドバイザーの戦略記事を読んだり、振り返り配信を見たりするのも、いち観戦者からは見ることのできない舞台裏を覗かせてもらえて、興味深かった。併せて、選手一人一人が試合に賭ける思いを振り返りツイートやインタビューで見聞きするにつけ、beatmaniaに対する愛情と、BPLに賭ける情熱を感じ、自分の心が鼓舞されているのに気づいた。
彼らの姿、そして曲たちを聞いて「beatmaniaをやりたい」と自然と思うようになった。そもそも私の、beatmaniaを含めた音楽ゲームのモチベーションがたびたびなくなるのは「音楽ゲームをしていて何になるのだろう」という、時にやってくる漠然とした不安からである。社会人になると学生の頃より自由な時間が短くなり、遊びに時間を費やすことへの罪悪感が大きくなる。ひとが健康的に生きていくために発散の役割をもつ余暇は必要なことなのだが、どこか啓発的、自己の成長につながることをした方がよいのではないかという思いに駆られることがある。そういった思いが沸いては消え、沸いては消えを繰り返してきた。
しかし、余暇というものは(ここで全てを語るには話の論旨がずれるので割愛するが)、同じ活動を通して人と繋がることや、その活動を通して仕事では得られない、自己の努力に対する成果を享受するという重要な側面がある。思い返せば、私は音楽ゲームと出会ってからのおよそ18年間、ゲームを通してさまざまな人と知り合い、ゲームにおいても研鑽を積んで、まぁ、自分で言うのもなんだが、そこそこうまい層まではこぎつけたと思う。趣味における努力の過程が人生に役立った場面も一度や二度ではない。進学や就職の決め手には、いつも音ゲーがあった。
さらに、BPLではe-sportsとしてbeatmaniaの競技性がみとめられ、第三者的な評価がおりたことも大きい。ゲームは遊びかもしれないが、遊びの中や、その先に人生がある。そのことを客観的に証明してくれたのが、今までゲームを否定され続けて育った末端のプレイヤーにとって、救いの光となった。
話を戻して、モチベーションが戻ると、週にいっぺんくらいの頻度でゲームセンターに通うようになる。今は一番うまかった頃(Cannon Ballersごろ)にはまだまだ届かないが、いいペースで腕を戻しにいけている。何よりBPLを通して、好きなことを好きだと思って向き合えることがうれしい。なにごとにも捉われず叩く鍵盤の心地よさといったらない。
今後のこと
自分のモチベーションを喚起されたのに加えて、もうひとつの思いが芽生える。DPである。
現在の公式におけるDPの扱いはなかなかのもので、KACはおろか、実力テストがない、BPLアリーナ(だったかな?)がない等、SPと同格に扱われていないことは明らかである。今回のイベントの各支局であるYpsilonDPLを出すためには、SPの実力テストにWEBサイトからエントリーして(テスト自体はやらなくともよい)当該楽曲を遊ぶという、非常に面白いことになっている。SPと同じように……と言わないまでも、いつぞやのKACのときのようにDP部門が設けられたり、BPLの中でSPとDPの混合戦になるなど、そういった未来がくれば一プレイヤーとしてこれ以上うれしいことはない。それに対して、末端のプレイヤーである自分ができることは正直多くはないと思われるが、少しでもDPの敷居を下げて興味を持ってもらったり、またやってみようかな、と思ってもらったりするためにできることがないか、ちょっと探してみたいな、というきもちが芽生えている。
最後に、来年もBPLが開催されることはこの上なく嬉しい。さらに、SDVXとDDRも仲間入りしてパワーアップも見込まれ、早くもわくわくしている。ゲームの中でもやや敷居の高い音ゲーを人口に膾炙することの難しさは想像に難くないが、どういった戦略でe-sportsとして盛り上げていくのか、目が離せない。
読んでくださり、ありがとうございます。今日おこった熱量をにぶつけて書いているので、あとで直したいところが出るかもしれませんが、ポジティブなものは、熱にまかせて文章を書くことも、ときに必要かなと思います。
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