意外と思われるかもしれないが、旅行がすきだ。旅行先がすてきな場所だということはもちろん、東京という、人の密集した場所を一時的でも離れられることも魅力的だ。一人のときは交通機関の制約があるものの、複数人ならば電車の恐怖も軽減される。そのくせ一人旅がすきという、めんどうな輩である。
今回の旅は、18きっぷを特急で使えないことを知らずに買ってしまい、「4回分余ったンゴ……」という友人のツイートからはじまる。ちょうど佐倉で開催されていたブリジット・ライリーの展示を見に行きたかったわたしは、即座に「ほしい」とリプライを送った。気前よく格安で譲ってもらい、ブリジット・ライリーの展示を見に佐倉へ。残りの3回はいつもの面子でちょっと出かけてみるか、ということで表題の旅が決まった。余談だが、きっぷを譲ってくれたのはウシジマくんを教えてくれた友人である。ちょっと変わっているが、わたしにとっては「とてもいいやつ」である。
まずは風祭駅へ。「風祭」という名がすでに観光地向きで、涼やかさがある。風祭は小田原かまぼこの代表格である「鈴廣かまぼこ」さんの本店がそびえている。駅の改札と店が直結しているという、鈴廣かまぼこさんのために存在しているような駅だ。数年前に登山をしたときに鈴廣かまぼこさんに寄ったのだが、そのときは人気の鰻屋の待ち時間を潰すという消極的な目的で来訪していたため、あまりじっくりと見ていなかったのだ。余談だが、結局登山の道中でスズメバチに刺されて下山し、それ以降山に登るのをやめたという落ちまでついている。
広い店内には購買スペースにイートインスペース、小ぶりのバーもあった。土曜日の午前中だが、人はまばらだ。翌週と翌々週が三連休なので、みな外出を控えているのかしら?
とりあえずビールでも飲んでみよう、ということで友人と300mlを分け合って飲んだ。ふだんビールを飲まないので味のよしあしがわからないまま完飲。飲みやすかった。つまみには中に芋がまるごと入った揚げかまぼこと、チーズ入の揚げかまぼこを食べた。美味。
腹ごしらえのあとは買い物をすることに。商品の裏面を見るとスーパーで見るような材料が使われておらず、驚く。原材料表示に知らない名詞があるととりあえずググってしまうタイプなので、魚肉加工品を今まで全く買わずにいたのである。ひととおり回って魚肉ウインナー(シーセージというらしい)としんじょ、そして宅飲み環境を整えるべく見慣れないラベルの梅酒と日本酒、そしてオードブルかまぼこ(酒のつまみ向きのテイストらしい)を買い、配送してもらった。買い物をしたのが11時ごろだったのだが、東京方面は翌日の時間指定を受けられるようだった。近いっていいことだ。写真は一部食べてしまったので、写っていないものもある。
そのあとはすぐお隣りにある「鈴廣かまぼこ博物館」へ。三階建てで、一階がかまぼこの製造工程とほんもののかまぼこ工場とかまぼこ作りの体験スペース、二階がかまぼこ板アートの美術館、三階が食と科学、みたいな名前でかまぼこの弾力やタンパク質、水のことについて詳細な展示がある。二階より上に行くのは今回が初めてだった。どのフロアも大きすぎず小さすぎずで、疲れる前に次のフロアに移れるのはよい。
かまぼこの製造過程は実際の道具の複製を動かしたり、かまぼこの形をしたパネルをめくりながら学習できるのがおもしろい。二階のかまぼこ板アートは公募展示の入賞作や著名なアーティストの作品が展示されており、さまざまな発想が見られて飽きがこなかった。一番気に入ったのはこちら↓
よい……………!
三階はかまぼこを科学する、という感じで論理的なかまぼこの話を聞ける。ARを使用した学習スペースもあり、21世紀(初頭)っぽい。たんぱく質のサプリの販促スペースであろう場所にはタニタの体組成系があり、体重計と、両手でレバーを握って部位ごとの筋肉や脂肪の数値を出してもらえる。鍛錬ずきのわたしはまっさきにとびつき、自分の体のバランスを係員のおじさんに教えてもらった。
その日そのスペースはがら空きだったので、わたしたち三人が食いついておじさんたちもうれしかったと思う。それにしても、筋トレをしているにもかかわらず上半身が貧弱なので、メニューを変えるつもりだ。下半身は申し分ないので、形を整える段階に入ろうと思う。
さいごに筋肉のためにたんぱく質を取りましょう→かまぼこを食べましょう→それでも足りないときは魚のチカラというサプリメント取りましょう、という論法でサプリメントの試供品をいただいた。
かまぼこの含有するたんぱく質に感動していたわたしの横で、鶏肉ずきの同居人が「鶏むねにたんぱく質いっぱい入ってるから、今までどおりでいいね。」と言った。表によると鶏むね肉100gぶんのたんぱく質を摂るためにはかまぼこ4切れでイーブンである。主食でもないのにこの含有量は目を引くけれど、言われるとそんな気もしてくる。いずれにせよ、1日のたんぱく質量が不足していることは確かなので改善していこうと思った。おじさんありがとう。
一通り鈴廣かまぼこさんを満喫したあとは小田原へ戻り、海鮮丼で有名な海舟さんへ。以前ひとりで小田原に来たときに立ち寄った店だ。
なぜ海鮮丼屋でアジフライを?と思われるかも知れないが、そのときは諸般の事情によりアジフライを渇望していたのだ。たいへん大きく食べづらかったが、味は確かだった。
その後温泉に行くか、沼津にある深海水族館に行くかを相談した。その日はは涼しく、温泉に入って汗を流そうという感じではなかった。東海道線でそのまま沼津に向かうことになった。熱海で電車の待ち時間があったので、足湯に寄った。タオルを持ってこなかったため入らなかったけれど、のどかな空間だった。熱海はろくに見たことがないので、そのうち行ってみたい。
深海水族館は二度目だったが、前よりぐんと人が増えていた。繁盛しているのはよろこばしいが、あまり大きな施設ではないのでやや見づらい。前回より解説がていねいになっている箇所もあり、わかりやすかった。ここは実際に行ってみていただきたいので、あえて写真は貼らない。チケットをちぎってもらってすぐに配置されている、浅い海と深海に生息する同類の生物の比較コーナーがすきだ。環境に応じて適切な進化・退化をとげていることがわかるので、どれも見ていておもしろい。
沼津駅まで戻るタクシーの中で鈴廣さんにいただいたサプリメントを飲んだ。袋をあけたとたん金魚のえさのような匂いが広がり、がんばって飲んだ。もう飲みたくないと思った。
帰りのグリーン車でねむりこけ、川崎で途中下車して中華成喜さんへ。大衆中華料理屋という佇まいだった。薄めの味付けがうれしい。写真は忘れました。そのまま帰途へつき、雨の降りしきる中をのんびり歩いて帰った。
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