◆感想『九条の大罪』第55審「愚者の偶像」⑥ 

今週のお話

同じやり方では1000万には絶対届かないと途方に暮れる数馬。前にもでてきた同僚とおぼしき男が、1000万ときいて驚く。このままでは自分も酒でやられるし女の子も潰れると。そこに、独り言の大きい中年のおじさんが歩いているのを見かけた同僚は、頭のおかしいやつが増えてきているといい、数馬の稼ぎを聞いてたかってくる。「同じ店で同じ時間過ごしているのに差が出ているのは努力が足らないからだ。」と数馬は正論をぶつけるが、「説教たれんのか、お前なんて運だけだろ?」と反応したのをみて、何を言っても無駄だと悟り、言いすぎたことを謝って朝食を奢るの。その後、路上で数馬は貧乏人のことをさげすむ。その代表格となるのが「蒸発した親父」である。同僚は疎ましそうに付き合っているような感じだが、数馬はそこで「マイナスな思考を次の世代にも伝承するのが貧乏人だ。」ともいう。

帰宅して、太客ももよとのLINEに応じる。ヒアルロン酸や脂肪吸引など、写真つきで数馬に送っている。数馬も返してはいるが、ほぼももよから送っているような状態だ。ももよも「闘っている」と見做し、決意を固めたような表情の数馬。一方、ももよは千歌に連絡を取り、前にやりとりした稼げる仕事を紹介してもらう。それにしてもしっかり整形したももよは、まるで別人である泣きぼくろなんてなかったと思うのだが……。千歌は好意的に仕事を紹介し、切った後、「私の養分頑張って。」とメイクに励むのだった。それにしてもベッド横の灰皿?のタワーがすごいな。

数馬は壬生に連絡をとり、1000万稼ぐのは難しいことを伝える。壬生は「安く買って高く売るのが金儲けの基本。」と車や不動産、会社を挙げたあと、近道するなら別の方法もあるという。「リスクをとる覚悟はあるか?数馬。」との問いに、数馬は肯定し、壬生の見ている成功者の景色を自分も見たいと答える。壬生は今いる高層マンション外を見つめ「大したもんじゃねーな。ごちゃごちゃしてる。」と言うのだった。そして数馬はさきほど同僚に語った内容をなぞるように「貧乏カルマを断ち切る。」と強く決意する。

場面はももよに戻り、どこかの地方都市にバスで運ばれている。不安の入り混じる表情で着いた先は学校で、スマホと財布を預け……パンの代わりに一万円札の下がった校庭で競争をしている。しかも全裸でだ。男性側も全裸だが仮面や覆面をかぶっており、個人の特定はできない。馬の覆面を被った男が狼の覆面を被った色黒の男にこの催しについて尋ねる。どうやら馬の男は新入りらしい。「大人の運動会」だという狼に、誰の紹介かと尋ねられる。川原という社長の名前を出すと察したようで、ネット広告の代理店かなにかかと狼男は問う。馬男は最近会社を作ったが、飲み屋で誘われたのだという。しかしこの色黒の方、小山と体格などがよく似ているなー。富裕層がお金を出し合い、山奥の廃校で裸の運動会を企画したのだという。面接で集めた女の子の参加料はひとり20万、小山と千歌の愛人契約と同じ値段である。女性側はももよのように、スマホも財布(身分証)も預かっているので、情報漏れの心配もないという。モデルもグラドルもお金がないので、事務所には内緒で参加している。競技ごとに一位を取れば10万円なので、みんな必死なのだという。

「さ、これからがメインですよ。」という狼男の言葉から、舞台は体育館に移り、1枚のマットの上に女の子が座っている。その前方に男が並んでいて、握手会のような状態である。「大人の組体操」というが、お気に入りの子に並んで、10万円のチョンの間ができるのだと。そこでももよを見つけた数馬は、馬の覆面を被っていたわけだが、校庭に戻って覆面を投げ捨て立ち小便をする。そして「ここにいる女も男も気持ち悪い連中だぜ。なんでも金に換算しやがって。」と捨て台詞のようなものを吐くのだった。

そして最後に九条。京極に連絡し、伏見の接見に行くことを伝えている。烏丸も同行しているが、その表情は九条を憂えいているような様子だ。

感想

場面の転換が多く、情報量の多い一話だった。順に見ていこう。

最初の同僚との会話シーンは、数馬の父親の話が出てくる。これを反面教師に、そのあとのシーンで「貧乏カルマを断ち切る。」と話している。最初、数馬の金儲けは千歌に認めてもらうためだったし、たしかにそれはあるのだろう。しかし、父親の蒸発によって家族が被った経済的・精神的損害はなかなかのものであると予想できる。母親との電話でも、数馬は妹思いの優しい青年として描かれ、苦労してきたことがうかがえる。そして、父親の言動を受けて育ってきた数馬は、ここにくるまでまさに「金儲けはずるい人間がしてるって思いこんでた。」のである。となると、ここでの雑談と、そのあとの決意のシーンは重要で、「貧乏カルマ」のみならず、父親の呪いを断ち切る「宣言」なのだ。

しかし、同僚に説教垂れたところで1000万は集まらない。ももよとのやりとりによって、数馬は決意を新たにし、壬生に連絡を入れる。壬生の見るような「成功者の景色」を見たいという数馬だが、いっぽうで壬生は「大したもんじゃねーな。」と一蹴する。壬生にとって金持ちになることは手段にすぎず、数馬のように目的ではない。数馬も千歌に認めてもらう手段としての側面はあるだろうが、話が進む中でそれがどうもあまり押し出されている気がしない。

数馬は壬生に絡め取られようとしている。以前言っていた、前科のないやつに任せたい仕事の前に、今回の「大人の運動会」が入るわけだが、これは一体なんだったんだろうか?ももよもももよで、数馬への入れ込みようはすごいな。そこが夜職が夜職たるゆえんなのだろうが。女性の参加費用も20万となかなかだが、返ってくるものが大きいからこそ参加するのだろう。主催するのに資金を提供しているのは小山たちのような富裕層であり、ももよを筆頭に、女性の斡旋は千歌が行っていて、数馬がそれに参加していたというと、なかなか興味深い金の流れ方をしているなあ〜と思わされる。これに気づいたとき、数馬はどう感じるのだろうか。そして狼の覆面はおそらく小山だろう。馬の覆面を数馬は外していたが、その後の展開で顔を合わせることがあるのかな〜と思ってしまった。ただ、小山は覆面、数馬は素顔であれば、小山は瑣末な人間のことなど忘れてしまっているから、何も起こらずに終わるのかな。書かれない可能性もあるけど。そして、最後ももよがいるのをみて「女も男も気持ち悪い連中だぜ。」という数馬の悪態は、自身に返ってくることを念頭に置いて吐いているのだろうか……。そしてその「気持ち悪い連中」からお金を引っ張っている自身の姿も含め、数馬の心情的な部分が気になる。

最後の九条と烏丸は、烏丸がつらそうなかんじだ。まぁ、このまま接見をして、そこで話をして、その後、という感じだろうか。

どうやら来週は予告を見ると作品の名前がないので、また再来週、だろうか。

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