『ふがいない僕らは空を見た』(著:窪美澄)

おそらく何かのおすすめでこの作品があがっていて、買ったのだと思う。ただ、その作品のおすすめを見たのも2,3年前で、今何も思い出せずにいる。

冒頭に収録されている「ミクマリ」において、男子高校生と人妻のいびつな関係が描かれる。そこから、人妻、男子高校生に恋をするクラスメイトとその友人、男子高校生の友人、母親へと話の視点が移り、同じ時間軸のできごとがそれぞれの短編が語られる。どの人物の視点からでも、ものごとやできごとに対する描写がみずみずしく、それでいてサクサク読める。いっぽうで、そのサクサクすすむ時間の感覚と、主人公にとっての「できごと」の重みはあまり釣り合いがとれていない、チグハグさがおもしろい。そのアンバランスさも残酷というか、若さゆえというか、社会との折り合いをどうもつけられないままきているというか、それぞれのキャラクターの抱える悩みやコンプレックスがかえって浮きぼりになっていた。

個人的には、団地に住む男子高校生の話が、社会の格差を感じつつ過ごしているようすがていねいに描写されつつ、先に向けた希望を捨てていない様子もみられてよかった。

今読んでもおもしろかったが、なんだろうな、人を好きになるとか、そういったことに関して時間をとれるし、感覚も研ぎ澄まされていた(であろう)、多感な思春期の時期に出会って、そのあと経験をへてもう一度読み直すような出会い方ができてもおもしろかったかもしれない。

読んでくださり、ありがとうございます。さくさく読める本もときどき挟めたらと思います。

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