◆感想『九条の大罪』第82審「至高の検事」18

今週のお話の前に

なんと前回の更新が6/6なので、1ヶ月半ぶりである。そのため、ちょっとこれまでのおさらいをしてから今回の話に入ろう。なにせ自分で話をよく覚えていないのだった。

軽いおさらい

伏見組の若頭である京極の息子・猛に恨みをもっている男からの依頼をうけて、犬飼らが猛を、拉致をする。犬飼は京極の息子と知らず拉致するが、解放したら自身の身があやういということで、殺して山に埋めるのであった。

その後、京極の息子だということを知った犬飼は壬生に助けを求め、壬生・九条と落ち合う。一方、身を隠していたホテルに残った仲間たちは京極の拷問を受けて惨死する。九条は、壬生との委任契約を結び、顧問をしている京極と利益相反する犬飼に対しては、「ひとりごと」として、死体遺棄で自首することを勧める。そこから九条は壬生に、京極の武器を持って自首するよう促し「梯子は外さないでくださいな」と忠告するのであった。これは彼らを刑務所という、外部からは絶対安全な領域にいれてしまうことで、京極の牙から守るためであろうか。

そうして、壬生は犬飼の海外逃亡の手引きをするが、最終的には犬飼が油断した隙をついて銃殺する。その前に京極から呼び出しをくらっていた壬生は、スーツケースに犬飼の死体を入れて差し出すが、生け捕りを命じていた京極は壬生を殴り、命をかけられる人間がいるか否かが自分と壬生との差であると、ヤクザと半グレについての持論を展開するのであった。

やりとりを終えた壬生は京極の武器をもって出頭する。そして、まもなく九条が逮捕される。罪状は犯人隠避、壬生が警察とのやりとりで、犬飼に逃亡を指示したことを告白したのであった。

一方で流木と、そこにイソベンとして働く烏丸は、伏見組の武器のニュースをみたようだ。そこから壬生の接見に向かう流木をみた烏丸は、九条が選任ではないのかと驚く。接見室の壬生は流木に、ノートに記した内容を撮影し、九条に伝えるよう依頼する。烏丸は制度上のタブーとして断るが、流木は刑事弁護人として生きていくための踏み絵として、手紙を躊躇なく撮影するのだった。

そんな流木の行為がどこか腑に落ちない烏丸のもとに、一本の電話が入る。刑事・嵐山であった。九条が烏丸を弁護士として選任したことを伝える。壬生の弁護を流木が行うことから、利益相反になってしまう可能性があることや、弁護士の実刑判決は実質死刑宣告であることなど、不穏な話がひろがる。

こうして接見に臨む烏丸は、九条からガラス越しの弁護士が「藁」にみえるといわれ「縋れませんよ」と静かに返すのであった。

今週のお話

接見室の九条と烏丸

思わぬ形で再会したふたり。どちらともなく話し始めたのは烏丸で、壬生から九条への伝言を流木が撮影した話がでてくる。烏丸が拒否した話をすると、九条は「烏丸先生らしい」と返す。写真を撮らなくても記憶しているという烏丸に、「流石、東大法学部主席。」と表情も変わらず返す。

その内容は、武蔵坊弁慶の辞世の句である。意味としては「冥土への道の途中で待っていてください。たとえ死ぬ順番に前後はあっても。」ということらしい。それに続いて「飼犬はもう二度と戻って来ない。」と。にしても壬生の字、うまいな。

それを聞いた九条はなんともいえない表情をしている。「ふーん」みたいな顔である。烏丸は忠告するように、裏切った人間はもう一度裏切るという。そして、流木が違反とされている撮影を踏み絵と話したが、手紙のやり取りは裁判所の許可をもらえばいいこと、撮影はポリシーとしてしないが、罪証隠滅にも逃亡にもつながらないので伝えたという。対する九条は、教科書的にはその通りだと認めた上で、現実的には時間がかかりすぎること、そもそも信書の授受を裁判所が許可するはずがなく、悪法に付き合うのは馬鹿げていると返す。

それを聞いた烏丸は、「悪法も法なら、法律がおかしい。私は制度と戦います。」

対する九条は「悪法も法ならば、弁護士の特権的立場を悪用してでも掻い潜る。」

と、真っ向から対立する意見をぶつけるのであった。それを九条は「建て前だけで生きていくのか、清濁併せ呑むのか。」と、自分たちの立場を要約したうえで、「本当に深いことをやろうと思ったら綺麗事だけでは生きていけない。どうしようもないドロドロのとこを扱っているから、返り血を浴びないわけにはいかない。」と語る。今、現に接見室のアクリル板の前で返り血どころか大量出血しているとつっこむ烏丸に対し「人にどう思われようが、私は自分の人生を生きている。」という。

烏丸は、流木のところにイソベンをしていること、流木が壬生の弁護人のため、利益相反になってしまうことを伝え、流木は九条の弁護人として、亀岡が適任だと思っているという。それに対しては、YESともNOともいいがたいような反応である。

それから九条は、自分の依頼人の引き継ぎを烏丸に依頼する。対策などもノートにまとめてあるという。加えて、烏丸に懐いていたブラックサンダーの面倒も頼みたいのだという。そうして別れた烏丸であるが、その表情は冴えない。九条の暮らしていた屋上へ向かい、生活感そのままの光景をめにする。ぽつんと佇むブラックサンダーは、主人の帰りを待っているかのようだ。はっとしたように「もう大丈夫だよ。」と、烏丸はブラサンを抱きしめるのであった。

九条

粛々と、日々はすぎていく。用を足している最中に取り調べの呼び出しを受けることなど、弁護士とは縁遠い場面であろう。取り調べの相手は嵐山。嬉しそうに嵐山は、信頼していた人間に裏切られた気分を尋ねるが、九条の返事は「別に。何も。」とそっけなく始まるのであった……。

感想

今回の山は、烏丸と九条のスタンスの違いがでてきたところだろう。烏丸は教科書的な生き方をしてきて、それでいて「そうではない」九条を「面白い」と惹かれつつも、反社会的勢力とのつながりを見ていくにつれ、離れていくこととなっている。九条は「清濁併せ呑む。」というが、これは貴賤で依頼人を差別しないこと、一律の料金で受け入れていること、人によって対応を変えない姿勢によく現れているように思う。九条自身が目指したいところが何なのかは、まだ明らかでないところがあるものの、本人なりの公平さや正義といったものを実現していく手段として、弁護士業という行為があるのかな。この感じは流木にちょっと似ているなというところがあるが、九条は流木ほど弱者救済に対する熱量はなさそう、である。今のところ。

一方で烏丸は制度と戦うという。このスタンスは亀岡にちょっと似ているかなと思い、ただ、亀岡ほどラディカルではない。烏丸のスタンスで物事を進めていく、というシーンはあんまり描写がないのだが、今回のやりとりや壬生のノートの撮影のくだりで、自身の立ち位置はいくぶん表せていたのかな。どうも教科書のレール上にあるような印象を受けるな。九条の最初の返しも、褒めているというよりはちょっと皮肉っぽい感じがするし。

深いスタンスへの考察は他ブログに任せるとして、今回の話は伏見組の武器の件、元伏見組のトラック事件、壬生の逮捕、犬飼の死、九条の逮捕、嵐山の思惑、など、要素が多くて忙しいな。そして、亀岡に本当に頼むんだろうか。亀岡は呆れて、でも受けてくれる、気はするが、やり取りの中で九条の「自分の人生を生きている。」なんていうところには、グッときちゃうような気がする。

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