以前歯医者で「歯は不可逆な体の部位です。現状維持がだいじです。」と言われた。ゲームのように成果が見えづらくモチベーション維持に難儀していたのだが、ここ最近は突破口を見出し、前よりも念入りに歯を磨けている。ポイントは減点式で考えることで、たとえば「歯肉の痛みが出てきたらやばい」、「歯が黒くなってたらやばい(これは経験がないので想像だ。果たして、毎日磨いてそんなことがあるのか。)」というふうに「やばい」ラインを設け、そうならないようにする。何もなければ次通院したときも清掃だけで終わるので、時間がかからない。歯肉炎だ虫歯だなんだとなると処置や指導が入り、予定がおしてしまう。歯医者に行くことの何がいやかといえば、それがいちばんいやなのだ。

先日友人の家で遊んだとき、一人が「歯、磨いていい?」とことわって磨き始めた。歯磨きがすきだという。ボードゲームをしている傍らでシャカシャカと音がする。こういう場面で歯を磨いたことがなかったので、不思議なひとときだった。

うちに帰って、このことをもう一度考える。たしかに外出中に口の中が気になることは多々ある。うがいで済ませてしまうのだが、やはり磨いておきたいと思う。そういうとき、セットを持ち歩いておけば対処できる。さらに、次回の診療時間を縮める一助にもなる。一石二鳥だ。

それに加えて「歯磨きがすき」という彼女のことばに説得力があった。わたしにとって「すき」は、ものごとを行う動機しとして相当強い部類に入る。「やらないと悪化してやばい」という焦燥感が歯磨きのモチベーションに寄与しなかったのは、当然の帰結である。マイナスの動機でわたしが動くことは皆無だ。

「予定通りにものごとがすすむことがすきです。だからわたしは歯磨きをします。」

このほうがよっぽど前向きで効果的だ。彼女とは数カ月ぶりに会ったのだけれど、いろいろと話した中でこのことが一番ありがたかった。

今日も読んでくださり、ありがとうございます。歯のないところが痛いです。