読んだのは5冊?今回は長々と書きたいものもあったので、それについては別記事を立てた。楽しみにしていてほしい(本当か?)。今月は全体的にトラブル続きで心にゆとりを持てなかったため、あんまり読めていないが、一冊一冊が魅力的でいい時間を過ごせた気がする。
まず『モレ村の子どもたち』は別の本を借りた帰りに目に入って借りた。たまにはこういう出会いもいい。
朝鮮戦争前後に、幼少の著者が経験したできごとを基に書かれた短編集。いっときだけ預けられた西洋の少女との出会いや、川べりに住んでいたホームレスの話、そして懇意にしてくれていた年上の女性の変貌してしまった話など……淡々と書かれていることで、かえって読後の余韻は強かった。
柔らかいタッチながらもどこか物寂しさを感じさせる挿絵もよくきいている。
つぎは『援助関係入門』という、タイトルどおり対人援助の入門書。概要をつかむにも実践にも使える。だいぶ前に読んで、読み返したくなって再読。専門書は図書館になかったり、考えることが多く本に直接書き込んだりするので、買って持っている。
今回読んでもっとも響いた箇所が「物語の書きかえ」についてだ。
障害をかかえることになったという現実を受け入れたうえで、既存の物語を書きかえていくことが求められていますが、それは、絶望的ともいえるほどに困難な課題です。だからこそ、そこには誰かによる支えが必要とされるのです。
第5章 「4つの援助モデル」より
強調した「既存の物語を書きかえていく」というのが、今のわたしにはクリティカルだった。障害の有無を問わず、生きているとこれまでの物語を書きかえる必要にせまられるときがある。自分の人生をふりかえってみても書きかえた痕跡はところどころにある。改めてここのエッセイを読み返してみると、出会った人や読んだ本によって、少しずつマイナーアップデートを重ねている。
そして、この「書きかえ」はフィクションの中でも重要な役割を果たしている。本に限らず、だいすきな作品のことを思い返すと、だいたい何かが起きて、途中からキャラクターの考え方が変化していく。まさに「物語の書きかえ」だ。なかでもFF9はすごくわかりやすい。キャラクターが変化していく場面が多く、彼ら個人の物語の書きかえによって物語全体がすすんでいくからだ。
また、小説を書くときに抜けていた視点のひとつがこの「書きかえ」なのではと、はっとさせられた。さまざまな立場の人物を書いているが、そこから出てくるパワーがどうも弱い。登場人物が今まで抱えていた物語を「書きかえ」る根拠、その過程がぼんやりしてしまっているのだ。今回連載しているものが詰まったのもそこに理由があるのではないか。そんなことを思う。
よもや福祉の専門書から自分の小説の欠陥に気付かされるとは思いもしなかったが、そういう意味でも読み直してよかった。今後、自分の小説を書いたあとに見直すポイントをつかめそうだ。
読んでくださり、ありがとうございます。いま、『紙の動物園』をもういちど読んでいます。話の筋を知るのではなくて、構造を読み込むための読書です。同じゲームを何周もするのと似ているかもしれません。
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