タイトル通りの新書。わかりやすく包括的にまとまっており、刑法のことをよく知らなくても大丈夫。
罪と刑というと、どうしても行動の結果や被害者感情ベースで考えてしまいやすいところがあるが、そもそも刑がなんのためにあり、どう機能していき、社会復帰していくのかが望ましいのか、そして、現状における問題点が順を追って書かれる。
本書を読んでよかったと思うのは、そもそも「どうしてこの本を読もうと思ったのか」という根源的な問いに対する答えが明確になったことだ。タイトルの表す内容が気になって手に取ったのが最初だが、読み進めていくうちに、やがて戻っていくことを前提とした社会という土壌の方にも課題があることがわかってくる。犯罪者支援のなかで難しいことのひとつに、社会復帰する際に受け入れてもらうことがある。どこも受け入れてくれないので再犯してしまうという話もある。人生ゲームのように、みな同じスタートから人生が始まるわけでもない。
この不条理や矛盾を抱えた世界において、どのように罪や刑というものについて考え、被害者・加害者にとって機能するような仕組みや関係性を作っていくことができるのか。本業である福祉領域に携わっていても、社会のひずみや矛盾の煮凝りのようなところが、弱者にむけてあてられているなーと感じる場面はある。改めて、刑法・福祉といった分野における個々の事例にとどまらず、それをとりまく社会のありかたや構造上の課題に関心があるんだなーということを自覚できてよかった。たぶんそういうところを変えたい人は政治家とか、経営者とかになるんだろうなーとも思った。
個人的な快・不快が主張をするうえで幅を利かせがちな昨今、よりそういった、客観的な尺度の重要性は高まっていってしかるべきだろう。被害者感情にも、加害者擁護にもよりすぎず、健全に、それぞれの人生を生き直していけるような関係性を作っていけるような法の機能、責任に対して課される量刑とは何かというということについて、もっと考えていく必要があるのかもしれない。
読んでくださり、ありがとうございます。「生き直す」ということについてはまた別件考えることがあって、近いうちに書いておきたいと思います(忘れるので)。
コメント