◆『九条の大罪』第67審「至高の検事」3

今週のお話

バイクで新宿駅とおぼしき場所を通り過ぎる烏丸。流木が烏丸を追い、「忘れ物」とペン型のツールをみせる。警察・検事対弁護士は組織対個人なので、自分の身は自分で守るよう忠告する。烏丸は礼を伝え、警視庁に赴くのだった。

取調室では早速、嵐山の部下(深見だったかな?)が、スマホを出すよう促す。理由を尋ねる烏丸に対し、録音をしていないかの確認だと嵐山がいう。烏丸は素直に差し出し、用件を尋ねる。

深見は、九条の事務所を辞めた理由を問う。烏丸は冷静で、個人的な理由だと答えてそれ以上は語ろうとしない。2人の話す角度が向き合っていないあたり、おたがい相容れない様相をあらわしている。それに便乗するように嵐山は、「九条が犯罪者に取り込まれていくのに嫌気がさしたからでは?」と、やや本質に近いところをついてくる。そこで、交通事故の殺人犯・森田のスマホを証拠隠滅した件を挙げる。烏丸はあくまで知らないていを装う。すると嵐山は、森田が、九条の指示だと話したのだという。森田が自首したとき、九条の事務所の住所が位置検索の履歴で残っており、嵐山はそこから、証拠隠滅を図ったのだとうたがわない。烏丸は、事務所に相談にきたのであれば、履歴があるのが当然ではないかと問う。嵐山は、しらをきる烏丸の名前をあえて呼んで、胸にさしたペン型盗聴器で録音をしているのではないかと疑い、同じ機種を見たことがあるとか、九条と森田の会話も録音していたんじゃあないかとか、九条が証拠隠滅の指示をするのを、烏丸も聞いていたのではないかとか、共犯ではないだろうかとか、とにかくまくしたてる。烏丸はたった一言、「九条先生は弁護士の職務を遂行したまでです。」と、こたえるのだった。嵐山の目論む客観証拠は、手に入っていないわけである。

場面は変わり、九条の住む屋上キャンプに、壬生がいる。九条が、壬生の電話がコールしているのを教えてあげている。電話の相手は犬飼で、面倒を起こした人間を拉致り、暴行したが、処理をどうしたらいいかの指示を仰いでいる。壬生対菅原の乱闘をへて、犬飼はふたたび壬生サイドにいるようだ。壬生は、面識があるかどうかを確認し、犬飼が手落ちなく事を遂行したことを確認すると、どこかに捨てて、一旦身を潜めておくよう伝える。犬飼はすなおだ。そこに追加で、電話が終わったら電源を切っておくよう助言する。警察に微弱な電波が拾われるリスクを伝え、SIMも抜いて、別々の場所に隠しておく。そのうえで、事が落ち着いたら高速を走っている最中に電源を入れろと。これが足のつかない、スマホの隠し方なのだろう。会話を聞いていた九条は「お互い面倒ごとに巻き込まれてばかり」と同情する。犬飼との通話が終わってすぐ、また壬生のスマホに着信がある。今度の相手は京極で、妻から連絡があり、息子が行方不明なのだというが、何か知らないかということだ。顔を隠されている、ヤキを入れられた人物がうめいている。そこから壬生は何かを察するのだった……。

感想

さて烏丸の行動だが、とくだん九条を特別、イソベンしていたからとか、心配でやめましたとかいうのを悟られない返しをしている。依頼人はどうあれ、「弁護士としての職務」を果たしているだけとただこたえるのが、現時点での烏丸のこたえだ。それは冒頭で流木が「警察・検事対弁護士は組織対個人」と忠告したところと共鳴しているのかなという気がする。前者のように徒党を組んでかかるというより、弁護士はだいぶ、孤独な印象をうけた。流木はこれまでの経験から理解しているし、突然の呼び出しに応じる烏丸にたいしても、ペン型盗聴器を渡すことで思い起こさせている。じっさい、流木の忠告は正しく、嵐山の尋問のような状態であった。九条の返しに学ぶところがあったのか、言葉少なに烏丸はやりとりをする。次号まで尋問の続きが描かれるのかどうかは定かではないが、「弁護士としての職務」というキーワードもあり、気になるところである。

さて壬生サイドは、おそらく犬飼がヤキを入れたのは京極の息子だろう。だとすると、壬生としては、そこが相手に結び付けられてしまうとまずいわけで、犬飼はそれを知らなさそうであるときている。九条もいうように「面倒ごとに巻き込まれてばかり」なのだ。面倒ごとに面倒ごとが重なる、これは前作『闇金ウシジマくん』で、主人公ウシジマをマグネターと呼んだ戌亥のことが思い起こされる。壬生(もしくは九条)がはたしてそういった存在なのかは定かではないが、なんだかここからさらに京極との関係性はあやういものになっていくんじゃあないかと想像される。この、弁護士としての職務の側面と、依頼人と弁護人との関係性の側面の両面を追っていることも、この作品の魅力のひとつなのかなー。と思う。

コメント

WP Twitter Auto Publish Powered By : XYZScripts.com