◆わたしの「書きたいこと」のために

 以前書いた◆わたしの「書きたいこと」の続きだ。

 書きたいことが見えてくると、インプットの指標もみえてくる。なんとなくだが、読む本や見る映画の方向性がわかってくる……気がする。あらかじめ解が出ている問題の途中式を書いていくような……ちょっとちがうか。要は逆算するということが言いたい。

 わたしの出会うべき世界はどこにあるのかと考えたとき、ふと頭に浮かんだエピソードがあった。

 むかし通っていた塾の責任者が雑談をよくする人で、授業らしい授業をほとんどしていなかった。ときに中学生が聞いてもいいのかわからないラインの話をする人だった。そこで印象に残っているのは「人の家に行ったときは本棚を見なさい」ということばだ。そのときは漠然と「自宅の漫画の棚もそうだし、趣味嗜好が出るんだろうなァ」くらいのものだったのだが、今になってよくわかる。本棚にはその人の世界が凝縮されている。責任者は「たいしたことない本棚の人はどんなに社会的にえらくても本人もたいしたことない場合がおおい」とまで言っていたが(今思えばだいぶ言う人だなぁと思う)、まぁ、言わんとすることはわかる。

 今やなんでもアウトソーシング化が進み、本もその例にもれない。わたしは借りることが多く、手持ちを増やすのもいやなので、いまさら本棚をつくろうとは思えない。けれども、読んできた本たちの記録はきちんと残しておきたいと思う。いうなれば仮想本棚だ。じぶんの仮想本棚のなかを、わたしの「なりたい」や「書きたい」でいっぱいにしたらいいのだ。

 これまでは「とにかく読むのがたのしい」と、友人のおすすめを取り入れながら読んできた。目指す世界が見えてきた今、 おすすめしていただいた作品との出会いはそのままに、自分で探すこともしてみたい。自分の関心にまつわる下地をここでしっかり作っておくことで、しぜんと生み出すことばの力もついていく……と期待したい。たとえば、わたしは辺見庸の綴ることばの力に大層あこがれているのだけれど、それは彼の下地がしっかりしていることの証左だ。憧れているからこそ、もうちょっと彼の著作は読んでおいていいのかなという気がしている。

 そんなふうにして、世界を発掘していく下半期にしたい。なんと七月も終盤、早いものである……。

 今日も読んでくださり、ありがとうございます。みなさまからのおすすめは、いつでも募集してます。

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