◆感想『九条の大罪』第62審「愚者の偶像」13

今週のお話

菅原が山城と電話をしている。山城というのは「家族の距離」編で登場した、九条の先輩弁護士である。詐欺被害額の半額を請求してくるというのは暴利で、数馬が警察に相談することによって、恐喝として処理される可能性もあるのという。やりとりには菅原も加わっており、やや誘導的なところはある。その場に数馬もおり、どうやら壬生への、詐欺師を詰めた件について相談をしているようであるが、壬生が逮捕されると聞いて動揺している。そこから、九条も恐喝の共犯として逮捕されておかしくないという山城の言葉に、何かを思う様子だ。いっぽうの山城は、以前した九条の失礼を笑っている。むかしの師弟関係は、山城の中にはあまり残っていないようすである。その頃、九条は壬生と会っており、おそらく、今後のところについて壬生が相談しているというようなところではないか。

そうして、山城を通して恩を売った菅原は、壬生か自分かどちらかを選べと問われ、悩む。

後日、数馬は壬生のところを訪れたのか、呼ばれたのか、わからないが、自動車工場にいる。壬生は、数馬に頼みたい案件があるといい、1億を出資し、壬生と共同経営者になれという。これが、前歴のない人間に頼みたかった仕事なのだろうか?真意はかたられていないが、かなり額が大きくなっている。安い会社を買って高く売ることで儲けようという話で、数馬に居酒屋チェーンの社長について調べてこいという。数馬は正直に、1億はないというが、壬生は自身が数馬を育ててきた自負もあり、懐事情はだいたいわかっていると答える。それに対して、数馬は詐欺案件の世話をしてくれた礼に加え、その後、彼女の知人に紹介された弁護士に相談をしたところ、恐喝だと言われたことを話す。尊敬していた分、裏切られた気持ちもあると、数馬の等身大の気持ちも打ち明けているようにみえる。非常に素直である。壬生はその様子をみて、普段から取り分は半分にしてあること、不満があれば交渉すればよいこと、菅原が後ろにいることを見抜く。そして壬生のほうも、本心かどうかはともかく、数馬のことを気に入ったのは、自分のためではなく病気の妹や人のため(これは千歌もふくまれるのだろうか?)に行動していたからだと情緒的なゆさぶりをかける。そして壬生は、決定権を人に委ねず、自分の頭で決めろとウシジマくんのようなことをいう。浮かない表情だった数馬は、はっとして何かに気づいた様子をみせる。壬生は、これから菅原との件にケリをつけにいくと、数馬と別れるのであった。

その後、数馬は妹の数恵の病室を訪れる。点滴をしている数恵は、元気になったら数馬と江ノ島に行きたいのだという。その理由も、病院のテレビでみた、数馬が出ていた恋愛ドキュメンタリーで江ノ島に行っていたからだ。母と3人で江ノ電に乗って、崖の上のお店で海を見ながら、しらす丼を食べたいという。切実な妹の願いを聞いて、数馬は元気づける言葉をかける。数恵が眠ると母がやってきて、数恵の病気である拘束型心筋症を治すのには、日本でもできるが臓器移植に時間がかかり、すぐに手術できるアメリカで受けようとすると2億かかるという。支援団体に相談して募金を募ることを提案されたというが、母はいまいち踏み切れないようすで、数馬に意見を問う。数馬は、数恵の手術代のために貯金して、いま8000万あると嘘を言う。自分が2億貯めて手術代を捻出すると答えた。

帰りの電車だろうか。数馬は電車の中のマナーのなっていない人間や、スマホに夢中な乗客、ポイ捨てされた弁当の空箱などをみながら長い独白をする。内容としては、当然のように現状を享受しつつ、だらだらと惰性で生きているような人間(モブ)にはなりたくない、金を手に入れるために、毒を飲んでも叶えてやる、といったひとつの決意である。

さて、壬生は宣言どおり、菅原のアジトを訪れる。「壬生が来た。」と犬飼はナイフを握っており、やる気満々である。顔を隠され、縄で縛られた久我らしき人物が、床に転がっている。舎弟とおぼしき男らがわらわらと歩み寄り、壬生を囲む。逃げ道のないなか、菅原、犬飼は要求した3億のありかを問うのだった。

感想

お話がどんどんすすむ1話だった。連休で2週あいたので、だいぶすすんだ感じがする。さてさて、山城と菅原は「家族の距離」編でもぐるだったわけだが、今もつながりはあったらしい。前回とは逆で、菅原陣営が壬生と九条を追い詰める構図になっている。そこは犬飼の出所と、菅原と犬飼の共通敵が壬生だったことが大きいだろう。反社とはいわないまでも、そういったひとびとと関わることに警鐘を鳴らしていた烏丸の警告は、その正しさを証明したわけである。このあと壬生や久我がどうなるのかなーというのは、みどころである。

さて数馬であるが、困るたびに相談して言われるままに動いてきたわけだが、壬生に「自分の頭で考えて決めろ」と言われたことで、当初の目的を思い出す。会社だ千歌だなんだといろいろあったわけだが、考えて向かった先は妹の病室だったわけである。毒を飲んでも富裕層になってやるという決意は、以前、受け入れられなかった、金で買ってはいけないものを買うひとびとへ、理解はできずとも歩み寄っていく決意とも読み取れる。来週以降のところで、中心人物たちが大きく動いていくことはまちがいないだろう。

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