◆別世界への扉

いろいろあって、ヨガを習うことになった。これまでヨガとは全く無縁の人生だったので、ヨガといえばインド系のひとが修行のためにやるものという、ステレオタイプ的なイメージを持っていた。

会場に現れた先生は、(おそらく日本人だが)やや東南アジア系の顔立ちで、色は黒く、筋肉のあるからだはひきしまり、ほっそりとしていた。ヨガの先生らしい「いでたち」である。

まずは呼吸を整えていくようだ。胡坐の状態で目を閉じる。しんとした町外れ、昼下がりに、先生の声だけが響き渡る。催眠音声のような声質と波動。洗脳向きの声だ。確固たる哲学のうえに宗教をたちあげたら、このひとはきっとうまくいく……そんなことを考えて、しょっぱなから、失礼きわまりない。

呼吸が整ったら座位、立位、仰向け、さまざまな姿勢を取り、からだを動かしていく。呼吸を意識しながら筋肉の、空気の巡りを感じていく。弛緩と緊張、静寂と波動音声の循環。くりかえしていくうちに、からだのなかにある毒々しいものが、徐々に排出されるような気がしてくる。そう思った矢先に、大きめのくしゃみが出る。

よくわからないけれど、とてつもなくおもしろい。気分はすっかり高揚していた。 レッスンを終えて寝そべると、窓から青空が見えた。終日曇天の予報だったはずが、このときだけはすがすがしいほどに晴れ渡っていた。ふと、この青空のほかに、なんにも必要ないような気がした。

さて、肝心なのはここからだ。どうやら相当充足してしまったらしく、浮世の欲望までも排出されてしまったらしい。その日は休み前で、すきなだけゲームをしてから酒をあおり、あぶらっぽいものを食い散らかしてやろうと、いかにも俗っぽい目論見をしていた。しかしゲームもやりたくなければ、そこまであぶらっぽいものも摂取したくない。それどころか、読書すら遠慮したい。一度予定を立てるとよっぽど調子が悪くない限りは崩せないので当初の手はずどおりに動いたものの、申し訳程度に1クレジットだけ遊んでウイスキーを1杯呑み、かんたんなつまみをいただいて帰ってしまった。帰宅するとからだもまぶたも重たかったので、読書はあきらめた。

ヨガには現世の欲求をひどく矮小なものにみせてしまうような、なにかとてつもないパワーが備わっているのかもしれない。呼吸とからだの動きだけでどうしてこうなってしまうのかはまったく理解できないけれど、日常で味わえない世界を垣間見れた気がするので、決して悪いmのではないだろう。むしろ今後の創作や妄想に活かせてしまえそうな別世界の扉に、手をかけてしまったような気がする……。

今日も読んでくださり、ありがとうございます。現世の上をいくアッパー・ワールドです。この充足感は翌日のアトリエまにも大いに影響が出まして、本日19時更新です。よろしくおねがいします。

コメント

  1. […] だったので、朝は病院、昼前からアトリエという過密スケジュールだった。おまけに前日ヨガをやったあとの好転反応なのか、からだもあたまもだるさが残っており、すっかり呆けてし […]

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